実家を売る手順と相場の調べ方|更地と現状の比較

実家の売却を調べると、どの記事も不動産会社への査定の依頼から手順が始まります。
実際に先に来るのは名義の確定で、相場は査定を取る前に国土交通省と国税庁の公表値から自分で出せます。更地にするかを決めるのは最後です。解体は戻せず、家屋の状態を条件にしている控除も同時に消えるためです。
この記事の目次
査定より先に確定させる四つ。名義、共有者、境界、建物の書類
名義と共有者と土地の輪郭、そして建物の書類が決まっていないと、買い手が付いたあとで止まります。
| 確定させるもの | どこで確認するか | 決まっていないと起きること |
|---|---|---|
| 名義(相続登記) | 法務局の登記事項証明書 | 契約まで進んでも所有権を移せない |
| 共有者の意思 | 戸籍と遺産分割協議書 | 一人が反対すると全体の売却ができない |
| 境界と面積 | 確定測量図、筆界確認書、隣地の立会い | 引き渡し後の紛争。会社が扱いを渋る |
| 建物の書類 | 建築確認済証、検査済証、増改築の記録 | 建て替えや増築の可否を買い手が読めない |
相続で不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があり、怠ると10万円以下の過料の対象です。施行は令和6年4月1日、それ以前に相続を知った分は令和9年3月31日までに申請します(出典:法務省 相続登記の申請義務化に関するQ&A・2026年7月30日確認)。
共有物の変更または処分には共有者全員の同意を要するという民法第251条と第252条の規律は、令和3年の見直しでも維持されています(出典:法務省 民法・不動産登記法部会資料27・2026年7月30日確認)。持分だけなら単独で売れますが、買い手は限られます。
売主が親本人か、相続人か
成年後見が始まると、後見人が居住用の建物や敷地を売るには家庭裁判所の許可が要り、許可のない売却は無効です(民法第859条の3。出典:東京国税局 文書回答事例・2026年7月30日確認)。
親が売る場合とは使える特例も要件も期限も違います(実家を売ったときの税金|3000万円控除で0円になる条件)。
相場は査定の前に、公表されている四つの値で当たれる
査定額は会社が付ける売り出しの提案で、相場そのものではありません。
| 見る値 | 時点と公表 | 水準 | 使い方 |
|---|---|---|---|
| 取引価格情報・成約価格情報 | 過去の取引を順次公開 | 実際に売買された価格 | 同じ地域の似た面積と築年を並べる |
| 地価公示 | 毎年1月1日時点、3月に公示 | 正常な価格 | 近くの標準地の1平方メートル単価を見る |
| 都道府県地価調査 | 毎年7月1日時点、9月に公表 | 地価公示と同じ水準 | 公示のない場所と半年後の動きを補う |
| 相続税路線価 | 毎年1月1日時点、7月に公開 | 公示価格等の80%程度 | 0.8で割って公示の水準に戻す |
上の三つは国土交通省 不動産情報ライブラリの同じ地図から探せます。地価公示は地価公示法に基づき国土交通省土地鑑定委員会が毎年1月1日時点の標準地の正常な価格を判定し3月に公示するもので、一般の土地取引の指標が制度の目的です(出典:国土交通省 地価公示/都道府県地価調査・2026年7月30日確認)。
路線価は相続税と贈与税に使う値で、1月1日時点、地価公示価格等の80%程度を目途に定められます(出典:国税庁 令和7年分の路線価等について・2026年7月30日確認)。最新年分は国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表で公開されています。
ここで出るのは土地の値段だけです。建物にいくら乗るのかを会社に聞く順番にすると、査定額の違いの理由が読めます。
全国平均の上昇を、自分の実家に当てはめない
令和8年地価公示(令和8年3月18日公表、1月1日時点)は全用途平均・住宅地・商業地とも5年連続で上昇しました。ただし住宅地の変動率は、全国平均2.1%、三大都市圏3.5%、東京圏4.5%に対し、地方圏は0.9%、地方圏のうち札幌・仙台・広島・福岡の四市を除く地域は0.6%です(出典:国土交通省 令和8年地価公示の概要/公表資料・2026年7月30日確認)。調査地点は全国26,000、実施は25,565です。
同じ調査の中に0.6%の地域と4.5%の地域が同居しています。見るのは近くの標準地の変動率と単価で、不動産情報ライブラリの地点検索から出せます。
査定を取る前に知りたかったこと
編集部は沖縄の傾斜地を相続し、出口が見つからないまま保有しています。固定資産税は年約7万円で、売れても売れなくても毎年出ていきます。当時欲しかったのは査定額ではなく、この土地がどの水準の場所なのかという基準でした。
公表値で水準を押さえたあと、実物の提案を並べる
同じ実家でも会社によって提示額は変わります。相場を知るだけの利用で構いません。公表値から出した土地の水準と、会社の提案額の差がどこから来ているのかを聞くと、建物に値段が付くのかどうかがはっきりします。
無料で査定額を調べる売る手順は七段。どの段で何が決まるか
- 名義と書類をそろえる(登記事項証明書、課税明細、測量図、建築確認済証)
- 公表値で土地の水準を出す
- 複数社に査定を依頼し、金額の根拠と想定期間を聞く
- 媒介契約を結ぶ。売り出し価格と、値下げの下限を先に決める
- 売り出す。問い合わせと内見の数を記録する
- 売買契約。手付、引き渡し日、契約不適合責任の範囲、買い手のローン条件を確認する
- 決済と引き渡し。残金の受領、鍵と書類の引き渡し、抵当権があれば抹消登記も同時に行う
後戻りできるのは4段目までです。5段目以降で価格を動かすと、それまで見た買い手には二度目の提示になります(空き家が売れないときの選択肢|買取と値下げの判断)。4段目の媒介契約は三種類あります。
| 種類 | 依頼できる会社 | 自分で見つけた相手との直接取引 | 有効期間 |
|---|---|---|---|
| 一般媒介 | 複数社に依頼できる | できる | 3か月以内が標準 |
| 専任媒介 | 1社のみ | できる | 3か月以内 |
| 専属専任媒介 | 1社のみ | できない(会社を通す) | 3か月以内 |
登録証明書の交付や業務の報告の頻度も種類ごとに決まっています(出典:東日本不動産流通機構 媒介契約制度・2026年7月30日確認)。有効期間が3か月なので、更新のたびに価格と会社と売り方を見直せます。固定資産税をどの日で区切るかは法律で決まっていないので、契約書の文面を見ます。
売主が出す費用。手数料と印紙税と登記
上限の代表が仲介手数料で、会社が依頼者の一方から受け取れる報酬は代金を区分して200万円以下の部分に5.5%、200万円超400万円以下の部分に4.4%、400万円を超える部分に3.3%を掛けた合計以内とされています(消費税等相当額を含む。昭和45年建設省告示第1552号、最終改正は令和6年6月21日国土交通省告示第949号。出典:大阪府 報酬の額・2026年7月30日確認)。600万円なら11万円と8万8千円と6万6千円で26万4千円が上限です。価格が800万円以下だと別の枠が使えます(空き家が売れないときの選択肢|買取と値下げの判断)。
不動産の譲渡に関する契約書は軽減措置の対象で、平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成されるものは、契約金額500万円超1,000万円以下が5,000円、1,000万円超5,000万円以下が1万円です(出典:国税庁 No.7108・2026年7月30日確認)。
相続登記や抵当権抹消の司法書士費用、測量費は土地の形と筆の数で変わります。数万円から数十万円の幅を見て、見積もりから始めます。
売るために直接かかった費用は譲渡費用になります。国税庁は仲介手数料、測量費、印紙代、立退料、土地を売るための取壊し費用などを挙げています(出典:国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた・2026年7月30日確認)。領収書は捨てないでください。税額の計算と特例の判定は税理士の領分なので、編集部は金額を出しません(実家を売ったときの税金|3000万円控除で0円になる条件)。
更地と現状。どちらで売るかを分ける四つの線
| 見る線 | 現状のまま売る | 解体して更地で売る |
|---|---|---|
| 買い手の層 | 住みたい層と、直して使う層の両方 | 建てたい層。古家の解体を嫌う層も拾える |
| 先に出る費用 | ほぼ出ない | 解体費が売れる前に出る |
| 固定資産税 | 住宅用地の特例が続く | 翌年の1月1日以降、土地の税額が上がる |
| 取り消せるか | あとから更地にできる | 戻せない |
乗せられないなら手取りがその分減ります(空き家の解体費用の相場|坪単価と追加費用の内訳)。
税の側には家屋の状態を条件にする特例があります。被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例は、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡が対象で、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件です。家屋は一定の耐震基準に適合させて売るか、取り壊して敷地を売るかが要件です。令和6年1月1日以後は、翌年2月15日までに買主が耐震改修または取り壊しをする場合も対象で、相続人が3人以上のときの控除額は2,000万円です(出典:国税庁 No.3306 空き家を売ったときの特例・2026年7月30日確認)。適用の判定は税理士と税務署の領分になります(実家を売ったときの税金|3000万円控除で0円になる条件)。解体を急ぐ理由が税だけなら、買主が決まってからでも間に合う場合があります。
建物が滅失したときは、所有権の登記名義人等が滅失の日から1か月以内に滅失の登記を申請しなければならないと不動産登記法第57条が定めています(出典:法務局 建物の滅失の登記・2026年7月30日確認)。登記簿に建物が残っていると、土地だけの売買で買い手側の確認が止まります。
現状のまま売るときに効く三つの準備
買い手が読めないものは、買い手にとって全部リスクになります。
一つ目は建物状況調査です。平成30年4月施行の宅地建物取引業法の改正で、既存の建物の媒介契約書には調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載することになっています。制度は令和6年にも見直されました(出典:国土交通省 既存住宅流通について・2026年7月30日確認)。断る前に費用と分かる範囲を聞いてください。
二つ目は告知書です。雨漏り、シロアリ、給排水の不具合、越境物など、売主が知っている不具合を書面で先に出します。書いて渡したものは買い手が承知した条件になるので、覚えている限り書くほうが売主が守られます。
三つ目は家の中身です。残置物があるまま内見に入れると、買い手は広さも傷みも判断できません。
期限のあるものだけ、先に並べて逆算する
| 期限 | いつまで | 根拠・注記 |
|---|---|---|
| 相続登記の申請 | 取得を知った日から3年以内。令和6年4月1日より前に知った分は令和9年3月31日まで | 不動産登記法第76条の2、第164条第1項 |
| 空き家の特例を使う譲渡 | 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで | 特例の適用期限は令和9年12月31日までの譲渡 |
| 買主が耐震改修または取り壊しをする場合 | 譲渡の日の属する年の翌年2月15日まで | 令和6年1月1日以後の譲渡 |
| 建物の滅失の登記 | 滅失の日から1か月以内 | 不動産登記法第57条 |
| 譲渡所得の申告 | 売った年の翌年2月16日から3月15日まで | 国税庁 No.2020 確定申告 |
効くのは3年の期限が二本あることです。相続登記の3年と特例が使える譲渡の3年は起算点が違うので、同じ日付になりません。ここに書いた扱いは2026年7月30日確認時点のものです。
