空き家の解体補助金はいくら出る?条件と申請の順番

解体費用の一部を市区町村が出す制度は実在します。ただし国に個人が申請する窓口はなく、探す単位は市区町村です。
上限は10万円から80万円、率は費用の2分の1が中心。順番を1つ間違えると全額が自己負担になります。2026年7月30日時点で各制度の公式ページを確認しました。
この記事の目次
補助金を出しているのは市区町村。国に申請する窓口はない
空き家の解体に使えるお金は、国土交通省の予算が原資になっているものがあります。ただし所有者が国に申請するのではありません。空き家対策総合支援事業では、所有者等が実施する工事について国が3分の1、市区町村が3分の1という補助率が示されています。市区町村が制度を作っていなければ、国の枠は所有者まで届きません。
- 制度を持っている市区町村がある。持っていない市区町村もある
- 上限額と補助率は市区町村ごとに違う
- 年度ごとに予算が組まれ、枠がなくなればその年度内には出ない
都道府県が上乗せしている場合もあります。東京都の空き家家財整理・解体促進事業は、都の空き家ワンストップ相談窓口に相談した所有者を対象に、解体費用の2分の1で10万円を限度に補助します(家財整理は別枠で5万円を限度)。自分の市区町村の制度を探す手順は解体の補助金を自治体別に探す手順と共通の条件に分けています。
いくら出るか。実在する5制度の上限と計算式
| 制度(2026年7月30日確認) | 補助率 | 上限額 | 効いている条件 |
|---|---|---|---|
| 東京都 空き家家財整理・解体促進事業 | 2分の1 | 10万円 | 都のワンストップ相談窓口に相談した所有者 |
| 東京都北区 老朽空家等除却支援事業 | 2分の1 | 80万円 | 不良住宅の判定で評点100点を超えること |
| 神奈川県相模原市 危険な老朽空き家等除却費補助金 | 2分の1 | 50万円(世帯全員が非課税なら80万円) | 3通りの計算のうち最も低い額 |
| 長野県上田市 老朽危険空家解体事業補助金 | 2分の1 | 50万円 | 木造戸建で不良住宅と市が認めたもの |
| 茨城県つくばみらい市 空き家の解体補助 | 2分の1 | 30万円(老朽空家は15万円) | 市内業者が施工。枠は年3件 |
差が出るのは上限額です。上限が先に効くため、補助対象経費が上限の2倍を超えた分は戻りません。相模原市は、補助対象経費(消費税と地方消費税を除く)の2分の1、床面積1平方メートルあたり国土交通大臣の定める標準除却費(令和8年度は木造36,000円、非木造51,000円)を掛けた額、上限額50万円(世帯員全員が非課税者なら80万円)の3つのうち最も低い額を交付します。坪単価と追加費用は空き家の解体費用の相場にまとめました。
補助額の計算元になる見積を、先に複数取る
申請書類に付ける見積書は1社で足りますが、その1社の金額が上限の計算にそのまま入ります。市内業者に限る要件がある自治体でも、市内で複数社から取ることは妨げられていません。
無料で解体費用を比べる交付決定の前に契約すると1円も出ない
| 順番 | やること | 止まりやすい点 |
|---|---|---|
| 1 | 担当課へ電話で事前相談 | そもそも制度がない、その年度の枠が終わっている |
| 2 | 事前調査の申込。市の職員が現地で老朽度を判定 | 判定に1か月から2か月かかる場合がある |
| 3 | 解体業者から見積書と内訳書をもらう | 積算根拠が分かる内訳が必要 |
| 4 | 交付申請 | 同意書や納税証明の取り寄せで足りない書類が出る |
| 5 | 交付決定の通知を受け取る | ここまで契約してはいけない |
| 6 | 業者と契約、着工 | 着手届を出す自治体がある(相模原市は着手日から10日以内) |
| 7 | 工事完了、実績報告 | 領収書、取毀証明書または滅失登記、工事写真が必要 |
| 8 | 額の確定通知、請求、入金 | ここで初めてお金が入る |
上田市は、実績報告に添える請負契約書の日付は交付決定後になること、交付決定前に契約および解体に着手した場合は交付が受けられないことを明記しています。相模原市も同じ扱いです。
交付決定から着工まで最短でも7日は空く
建設リサイクル法では、床面積の合計が80平方メートル以上の建築物の解体工事は、着手の7日前までに発注者から都道府県知事へ分別解体等の計画を届け出る義務があります。義務を負うのは所有者の側です。決定の翌日に着工という進め方はできません。
年度のカレンダー。締切と予算枠で1年待ちになる
制度は年度で動きます。4月に始まり翌年3月に閉じるため、後半に思い立つと同じ年度には間に合いません。相模原市は締切が段階ごとに公表されています。
- 事前調査の申込は、工事を実施する年度の10月末日まで
- 交付申請は同じ年度の11月末日まで
- 工事の完了は、交付決定日の属する年度の1月末日まで
- 実績報告は、完了から30日を経過する日または年度の2月末日のうち早い日まで
- 請求は、交付額が確定した日から30日を経過する日または年度の3月末日のうち早い日まで
上田市も、工事費の支払いを済ませた上で申請した年度の2月末までに実績報告ができる工事に限るとし、予定件数に達した場合は受付を締め切る場合があるとしています。つくばみらい市は令和8年4月6日から電話とメールで申込を受け付け、枠は上限30万円が1件、上限15万円が2件。先着順ですが、老朽度によって順番が前後する場合があると添えられています。
対象になる空き家の条件。点数と築年で切られる
- 1年以上使われていないこと。北区は電気、水道またはガスの使用中止日を確認できる書類を求めます。今住んでいる家の建て替えのための解体は対象外です(つくばみらい市)
- 老朽度の点数を超えること。北区と相模原市は、住宅地区改良法施行規則の不良度の測定基準のうち外観目視で判定できる項目を使い、評点の合計が100点という線を引いています
- 建てた時期と用途。相模原市は平成12年5月31日以前に建築確認済証を取得した戸建てに限り、共同住宅や店舗、事務所、倉庫を外します。上田市は延べ面積の2分の1以上が居住に使われていた木造戸建住宅です
- 権利関係がきれいなこと。つくばみらい市と相模原市は所有権以外の権利が設定されていないことを条件にし、法人所有も対象外です
- 勧告を受けていないこと。つくばみらい市、上田市、相模原市とも条件にしています
指導の段階で相談に行けば補助の対象に残りますが、勧告まで行くと自費になり、固定資産税の軽減も外れます。空家法は市町村長の命令に違反した者を50万円以下の過料に処すると定め(第30条第1項)、命令を履行しないときは行政代執行法の定めるところに従い市町村長が自ら措置を行えるとし(第22条第9項)、その費用は命令の対象者から徴収されます(同条第10項から第12項)。
申請できる人。共有者全員の同意と市税の滞納
- 所有者または相続人。共有名義や相続人が複数のときは、全員の同意書を出した代表者1人が申請します(つくばみらい市、上田市、相模原市)
- 市税等の滞納がないこと。相模原市は申請者が属する世帯の世帯員全員に滞納がないことを求めます。北区は住民税を滞納していないことです
- 暴力団員等でないこと。3市区とも条項があります
- 同種の助成を他から受けていないこと(北区)
相模原市は登記事項証明書を申請日前3か月以内に発行されたもの、または固定資産税課税明細書の写しとしています。上田市は未登記の場合に固定資産課税台帳の写しなどでも受け付けます。相続登記は2024年4月1日から義務化され、取得を知った日から3年以内の申請が求められます。
全額を立て替える。後払いと対象外の費用
補助金は工事の後に入ります。実績報告に領収書の写しが要るので、手元の資金は解体費の全額を用意しておく必要があります。
| 費目 | 扱い |
|---|---|
| 消費税と地方消費税 | 対象外(東京都、相模原市、つくばみらい市) |
| 家財道具の撤去、運搬、処分 | 上田市は対象外。相模原市は敷地内の動産の除却と処分を対象に含む |
| 廃材の運搬と処分 | 対象(つくばみらい市、相模原市) |
| 整地、埋め戻し | 対象。ただし舗装費用等は除く |
| 塀、門扉、カーポート、物置、植栽、庭石 | 相模原市は附属工作物として対象に含む |
| 他の補助金を受けた工事 | 対象外(北区、相模原市) |
相模原市の実績報告には建物取毀証明書の写しまたは建物滅失登記の写しが並びます。不動産登記法第57条は、建物が滅失したときは滅失の日から1か月以内に滅失の登記を申請しなければならないと定めています。どちらも出さないままにすると家屋の課税が残ることがあります。
補助金に税金はかかるか。誰の名義で申請するかで変わる
受け取った補助金が所得として扱われるかどうかは所得税法第44条で決まります。国または地方公共団体から資産の移転や除却などの費用に充てるための交付金を受け、その目的に従って費用に充てたときは総収入金額に算入しない、という規定です。
広島国税局の文書回答(回答年月日 平成28年9月12日、関係法令は所得税法第44条)は、市の空家等除却支援事業補助金について、補助事業を行う者が空家等の所有者本人である場合は所有者要件を満たし、所有者の親族である場合は満たさない、という整理を示しています。親族が申請すると補助金はその親族に交付され、自分の資産の除却ではないという筋です。
実務で刺さるのは、名義が親のまま子が動く形です。今回確認した制度はいずれも申請者を所有者または相続人としているので、相続が済んでいれば所有者本人として申請できます。
解体後の固定資産税。6倍という説明の正確なところ
| 区分 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(200平方メートル以下の部分) | 6分の1 | 3分の1 |
| 一般住宅用地(200平方メートルを超える部分) | 3分の1 | 3分の2 |
建物がなくなれば住宅用地ではなくなり、この軽減が外れます。賦課期日は1月1日で、12月31日までに解体が終われば翌年度の課税から外れ、1月2日以降ならその年度の課税は変わりません。
ただし国土交通省の資料は、平成27年の総務省固定資産税課長通知を引いて、使用の見込みがなく取壊しを予定している場合などは特例の対象となる住宅に該当しないとしています。取壊し予定の空き家は解体前の時点で対象外と判断されている可能性があり、その状態なら税額の段差は出ません。2023年12月13日施行の改正空家法では、勧告を受けた管理不全空家等の敷地も特例の適用対象から除外されるようになりました。6倍という言い方は課税標準の話で、税額がそのまま6倍になるとは限りません。
制度がない、枠が埋まったときに効く順番
1. 見積の幅は上限額より大きく動くことがある
上限50万円の制度を1年待つ間に、見積の取り方で同じくらいの差が出ることがあります。
2. 跡地の使い道に別の補助が付いている自治体がある
上田市は、解体した跡地に1年以内に自己の居住する住宅または店舗の建設工事に着手した場合、空家解体跡地利活用事業補助金の対象になるとしています。
3. 解体しないで売る選択が残っている
相続した空き家を売る場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除する特例があります。要件は、昭和56年5月31日以前に建築されたこと、区分所有建物登記がされている建物でないこと、売却代金が1億円以下であること、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡であること。令和6年1月1日以後の譲渡では相続人が3人以上の場合の控除額が2,000万円に下がり、譲渡の時から翌年2月15日までに買主側で取壊しや耐震改修を行う形も認められます。買主が取壊す形が使えるなら、解体を自分でやらずに特例を取る道が出てきます(補助金を自治体別に探す手順、墓じまいの補助金)。
上限額の前に、総額を下げる余地を確かめる
補助の枠が埋まっていても、見積の差で数十万円の幅が出ることがあります。断りの連絡を代行してもらえるので、相場を知る目的だけの利用でも負担は小さいです。
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