生前整理とは?親が元気なうちに決めておく5つのこと

生前整理と検索して出てくるのは、たいてい片付けの手順です。
実家がある家庭で先に決めるのは、物より判断です。建物と土地の行き先、家財の線引き、お金と契約の在りか、墓と仏壇、意思の残し方の5つ。判断能力が落ちてからでは、実家の売却に家庭裁判所の許可が必要になります。
この記事の目次
生前整理とは何か。似た言葉との違いと、この5つの位置づけ
生前整理は、本人が生きている間に持ち物・財産・情報を自分の意思で整理しておくことです。遺品整理は亡くなった後に家族が判断し、老前整理は暮らしやすさのために本人が判断します。終活は葬儀や医療の希望まで含む広い言葉です。
| 決めること | 先に決めないと起きること |
|---|---|
| ①実家の建物と土地の行き先 | 空き家のまま相続し、税の特例の要件を外す |
| ②家財の線引き | 誰が捨てたかで兄弟が揉める |
| ③お金と契約の在りか | 口座と契約を探す作業に数か月かかる |
| ④墓と仏壇の行き先 | 引き取り手が決まらず実家に残る |
| ⑤意思の残し方 | 本人の希望を証明できない |
片付けの手順と親への切り出し方は生前整理のやることリスト、引き渡しまでの全体像は実家じまいとは?進め方と費用の全体像で扱っています。
①実家の建物と土地の行き先を決めておく
令和5年住宅・土地統計調査では空き家は900万2千戸、空き家率13.8%、賃貸用や売却用や別荘を除く空き家が385万6千戸あります(総務省統計局/2026年7月30日確認)。行き先は、親が生前に売る、相続してから売る、誰かが住む・貸す、寄付や相続土地国庫帰属制度を探すの4つに整理できます。売る前提の手順は実家を売る手順と相場の調べ方にまとめました。
生前に売るか、相続後に売るかで使える控除が違う
親が自分の住まいを売る場合は、居住用財産の3,000万円の特別控除。住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、親子など特別の関係がある人への売却でないことが要件です(国税庁 No.3302/2026年7月30日確認)。
相続後に売る場合は空き家の特別控除で最高3,000万円、令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上なら2,000万円まで。適用期限は令和9年12月31日までの譲渡。要件は昭和56年5月31日以前の建築、区分所有建物登記でないこと、相続開始の直前に被相続人以外の居住者がいなかったこと、売却代金1億円以下、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却(国税庁 No.3306)。親が要介護認定を受けて老人ホーム等に入所した場合も特定事由に当たれば対象になり得ます。
誰が相続するかで評価額も変わる
相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数(国税庁 No.4152)。小規模宅地等の特例では特定居住用宅地等は330平方メートルまで80%減額でき、同居親族には申告期限まで居住・所有を続ける要件が付きます(国税庁 No.4124)。
②家財の線引きを決めておく。誰が判断するかを先に決める
家財でこじれるのは量ではなく判断の権限です。
4つの箱に分ける
- 親が最後まで持っていく物:運べる量の上限を先に数字で決めます
- 特定の人に渡す物:相手を名前で決め、紙に残します。口約束だけだと後の遺産分割に混ざります
- 売る物・譲る物
- 捨てる物:自治体のルールで出す物と、業者に頼む物
先に捨てすぎないほうがよい物
- 建物の図面、建築確認や検査済証、増改築の記録:解体や売却の見積もりで使います
- 境界の資料、測量図、隣地との覚書:土地の売却で境界の確認を求められます
- 登記済証や登記識別情報、固定資産税の納税通知書
- リフォームや設備交換の領収書:譲渡所得の取得費に関わる可能性があります
仕分けの順番は生前整理のやることリスト側に置いています。
③お金と契約の在りかを決めておく。財産目録とデジタルの扱い
亡くなった後に家族が時間を取られるのは、処分ではなく探索です。
財産目録に書く項目
- 預貯金:金融機関名、支店、口座の種類。残高より在りかを優先します
- 不動産:所在、地番、家屋番号、名義、持分
- 有価証券:証券会社名、口座番号
- 保険:保険会社名、証券番号、受取人。受取人が古いままでないか確認します
- 負債:住宅ローン、カードローン、他人の借入の保証
- 貸金庫、預けている物・預かっている物、年金、企業年金、共済
デジタルの契約は「止め方」まで書く
- サービス名と、登録に使ったメールアドレスまたは電話番号
- 支払い方法(どのカードか、どの口座か)
- パスワードは書かず、管理の場所(管理アプリか、封をした紙か、金庫か)だけ書く
- その封や金庫を誰が開けるか
端末のロックを少なくとも1人が解除できる状態にするかどうかは、親に聞いて決める項目です。使っていない口座と契約は生きているうちに閉じます。
④墓と仏壇の行き先を決めておく
実家を空にする段で止まるのが墓と仏壇です。
墓について親に聞く3点
- 誰が承継するか
- 今の場所を続けるか、移すか、やめるか:移すなら改葬、やめるなら墓じまいの手続きに入ります
- 遺骨をどうするか:合葬、永代供養、樹木葬、散骨のどれを望むか
生前整理の段階で決めるのは金額ではなく、承継者の名前と方針の2点です。
仏壇について親に聞く2点
誰の家に置くか置かないか、そして宗派と付き合いのある寺院の連絡先。仏壇の中に位牌、過去帳、掛軸、預金の証書や現金が入っていることがあるため、中身の確認は親と一緒に行います。
⑤意思の残し方を決めておく。遺言、エンディングノート、後見
①から④で決めたことは、口約束のままでは残りません。
| 道具 | できること | 法的な効力 |
|---|---|---|
| エンディングノート | 希望、連絡先、契約の在りか、葬儀や医療の意向を書く | なし。財産の分け方は決められない |
| 遺言書 | 誰に何を承継させるかを決める | あり。形式を満たす必要がある |
| 任意後見契約など | 判断能力が落ちた後の財産管理を誰に任せるか決める | あり。公正証書で結ぶ |
自筆証書遺言書保管制度の手数料
自筆の遺言書は法務局に預けられます。手数料は保管の申請が1通3,900円、閲覧の請求がモニターで1,400円・原本で1,700円、遺言書情報証明書の交付が1通1,400円、遺言書保管事実証明書の交付が1通800円で、収入印紙で納付します(法務省 自筆証書遺言書保管制度 手数料/2026年7月30日確認)。預けた自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が不要です。
書く前に決める順番
- ①から④の方針を家族で確認する
- 財産目録を作り、名義と持分を登記や通知書で確かめる
- 誰に何をという骨格を決める
- 形式を選び、専門家に相談する
- 保管場所と、開ける人を家族に伝える
判断能力が落ちてからでは動かせなくなるもの
実家の売却に家庭裁判所の許可が必要になる
成年後見が開始すると、成年後見人が本人の居住用不動産を処分するには家庭裁判所の許可が要り、許可を得ないでした処分は無効です。処分には売却、抵当権の設定、賃貸借契約の締結・解除、建物取り壊し等が含まれ、現在は施設に入所していて将来居住する可能性がある家も居住用不動産に含まれます。申立手数料は収入印紙800円分(裁判所/2026年7月30日確認)。
相続が起きた後は登記の期限が動き出す
令和6年4月1日から、相続で不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象。施行日前に開始した相続は令和9年3月31日までが期限です(法務省 相続登記の申請義務化について/同日確認)。分割がまとまらない場合の相続人申告登記で履行できるのは3年以内の基本的義務のみで、分割成立後の追加的義務には対応しません。
買い手が付かない土地は、出口を先に確認しておく
相続土地国庫帰属制度の審査手数料は土地一筆当たり14,000円で、却下や不承認でも返還されません。建物がある土地、担保権や使用収益権が設定されている土地、土壌汚染がある土地、境界が明らかでない土地は申請できません(法務省 相続土地国庫帰属制度の概要/同日確認)。始める時期の目安は親が元気なうちに実家じまいを始める判断の目安で扱っています。
生前整理のデメリットと、実際に起きる衝突
時間と体力が想定を超える
1回2時間、月2回のような小さい単位に割るほうが続きます。
処分費用が先に出る
粗大ごみは自治体の手数料が要ります。世田谷区では有料粗大ごみ処理券がA券200円とB券300円の2種類で、品目ごとの手数料に応じて組み合わせて貼ります。中継所への持ち込みなら処理手数料が半額程度になります(世田谷区 粗大ごみの出し方/処理手数料について、2026年7月30日確認)。
費用を誰が払ったかが後で問題になる
片付けや解体の費用を子の1人が立て替えると、領収書と支払者の記録がない限り、後の遺産分割で負担の話に戻ります。
生前整理の相場。自分でやる場合と業者に頼む場合
| 間取り | 公表されている費用の目安 |
|---|---|
| 1R・1K | 約3万〜8万円 |
| 1LDK | 約7万〜20万円 |
| 2LDK | 約10万〜30万円 |
| 3LDK | 約15万〜50万円 |
| 4LDK以上 | 約22万〜60万円 |
出典はみんなの遺品整理、価格.com、税理士法人チェスターの各公表値(2026年7月30日確認)。相談のみは1名1時間あたり約3,000円〜5,000円、財産目録の作成代行は約50,000円〜100,000円が目安です。
費用を下げる順番
- 自治体のルールで出せる物を先に出す。業者のトラック台数が減ります
- 買取に回せる物を分ける。買取額が作業費と相殺される見積もりもあります
- 大型家具だけ、1部屋だけ、と範囲を区切って頼む
- 2社以上に訪問見積もりを取る
家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)は家電リサイクル法の対象で、処分のみなら購入した小売業者に引き取りを依頼します。
間取りごとの料金を先に比べておく
物量と搬出条件で金額が動くため、見積もりは複数社で取るのが前提になります。遺品整理士が在籍する業者の料金とサービス内容を、地域と間取りで絞って比べられます。生前整理に対応している業者も探せます。
遺品整理の料金を比べる業者に頼むときに確認する4点。無許可業者のトラブルは実数で増えている
国民生活センターの令和4年11月2日の報道発表では、不用品回収サービスに関するPIO-NETの相談件数は2018年度1,354件、2019年度1,457件、2020年度1,788件、2021年度2,231件と推移しています(国民生活センター 不用品回収サービスのトラブル/2026年7月30日確認)。
確認する4点
- 一般廃棄物処理業の許可:一般家庭から出る廃棄物の収集・運搬は市区町村の許可または委託を受けた事業者しか行えません(廃棄物処理法第7条第1項)。実家がある市区町村の窓口で許可業者を探します
- 追加料金の有無
- 作業内容と料金の明示:内訳のある見積書を出してもらいます
- キャンセル料
依頼後に無許可業者だと分かった場合は作業を断る、というのが同資料のアドバイスです。作業後に想定外の金額を請求されたら、後日納得した金額で支払う意思を示しつつその場での支払いを断ります。見積もりのために呼んだ事業者とその場で契約した場合などは、特定商取引法の訪問販売のクーリング・オフ等が使える可能性があります。相談先は消費者ホットライン188です。
許可と料金を並べて確認する
業者ごとの対応エリア、料金、在籍資格を一覧で比べられます。相見積もりを前提に、2社以上を候補に残してから訪問見積もりに進むと、当日の追加料金の話に巻き込まれにくくなります。
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