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農地を相続したらまず何をする?届出と3つの選択肢

農地を相続したらまず何をする?届出と3つの選択肢

親の田や畑が相続財産に入っていて、自分が農業をやる予定はない。

先に動くのは届出だ。相続に農地法の許可は要らないが、農業委員会への届出をおおむね10か月以内、相続登記を3年以内にしないと、どちらも10万円以下の過料の対象になる。活かすか貸すか手放すかを決めるのは、その後でいい(2026年7月30日確認)。

この記事の目次
  1. 相続に農地法の許可は要らない。要るのは届出
  2. 期限はおおむね10か月。過料は10万円以下
  3. 届出書には「あっせんを希望するか」の欄がある
  4. 相続登記は3年以内。間に合わないときの手当て
  5. 農地だけを切り離して放棄することはできない
  6. 選択肢1。自分で耕すか、貸す
  7. 選択肢2。農地のまま売るか、転用して売るか
  8. 選択肢3。国に引き取ってもらう
  9. 何もしないと固定資産税が約1.8倍になる分岐がある
  10. 相続税は税理士の領域。自分で見るのは区分だけ
  11. 細かい疑問への答え

相続に農地法の許可は要らない。要るのは届出

農地を売る、贈る、貸すときは農業委員会の許可が必要だ(農地法第3条)。相続はここから外れている。死亡によって当然に権利が移るので、許可を受けるかどうかを選ぶ余地がない(農地法第3条第1項第12号)。

代わりに置かれているのが農地法第3条の3第1項の届出だ。対象は相続(遺産分割を含む)、包括遺贈、相続人に対する特定遺贈、法人の合併・分割、時効取得など(西宮市/千葉市、2026年7月30日確認)。

引っかかりやすいのは特定遺贈だ。畑を1筆指定して渡す遺言で、受け取る人が相続人でない場合は、届出ではなく農地法第3条の許可が必要になる(農地法施行規則第15条第5号)。

小平市は、登記地目もしくは現況が農地の場合は届出が必要だと案内している(小平市、2026年7月30日確認)。地目が雑種地でも、現況が畑なら対象に入る。

相談者相談者
遺産分割がまだ終わっていません。名義が決まる前でも届出はいるのでしょうか。
実家じまいナビ編集部実家じまいナビ編集部
いります。分割前は相続人全員の共有として権利を取得した状態です。長野市は、共有で相続した場合は相続人ごとに届出が必要だと案内しています(長野市、2026年7月30日確認)。

期限はおおむね10か月。過料は10万円以下

期限は、権利を取得したことを知った時点からおおむね10か月以内。届出をしなかった場合と虚偽の届出をした場合は10万円以下の過料で、根拠は農地法第69条だ(小平市/せたな町、2026年7月30日確認)。

手続き期限出す先
相続放棄相続を知った時から3か月以内家庭裁判所
農地の届出(農地法第3条の3)権利取得を知った時点からおおむね10か月以内農地のある市町村の農業委員会
相続税の申告と納税死亡を知った日の翌日から10か月以内税務署
相続登記取得を知った日から3年以内法務局

(国税庁・タックスアンサーNo.4205/法務省・相続登記の申請義務化について、2026年7月30日確認)

届出先は農地のある市町村の農業委員会で、あなたの住所地ではない。田畑が複数の市町村に散っていれば、それぞれに出す。千葉市は2026年4月から、受理通知書を届出者の希望があった場合にのみ交付する運用にした。証跡を残したいなら窓口で希望を伝えておく。

届出書には「あっせんを希望するか」の欄がある

農林水産省の様式例第3号の1は記載欄が6つあり、6番目が「農業委員会によるあっせん等の希望の有無」だ。記載要領では、第三者への所有権の移転または賃借権の設定等のあっせんを希望するかどうかを書く欄だと説明されている(農林水産省・様式例第3号の1、2026年7月30日確認)。

届出は取り上げられる手続きではなく、借り手や買い手を探してもらう入口だ。費用はかからない。

相続登記は3年以内。間に合わないときの手当て

2024年4月1日から、相続で不動産の所有権を取得した相続人は、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務がある。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象だ(不動産登記法第76条の2第1項、第164条第1項/法務省、2026年7月30日確認)。

古い相続も対象だ。施行日より前に相続を知っていた不動産は2027年3月31日まで。

  • 相続人申告登記(不動産登記法第76条の3)。相続人であることを法務局に申し出れば3年以内の基本的な義務は果たせる。ただし正式な相続登記の代わりにはならず、遺産分割が成立したらその日から3年以内に改めて登記が必要
  • 登録免許税の免税措置。価額が100万円以下の土地に係る相続登記は登録免許税が免税で、期間は2027年3月31日まで。評価の低い農地はここに収まる場合がある

親がどこに田畑を持っていたか分からない、という詰まり方もある。2026年2月2日から所有不動産記録証明制度が始まり、相続人等が請求すれば全国の登記記録から名義人の不動産を一覧にした証明書が出る(不動産登記法第119条の2)。全国どの法務局でも請求でき、手数料は窓口で1通1,600円(法務省/政府広報オンライン、2026年7月30日確認)。登記簿上の氏名・住所と一致しない不動産は抽出されない。

農地だけを切り離して放棄することはできない

相続放棄は、相続を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する。田畑を外して預貯金や自宅だけを受け取ることはできない。

放棄が受理されると、その相続に関しては初めから相続人でなかったものとみなされる(民法第939条)。権利を取得していないので、農地法第3条の3の届出の対象からも外れる。3か月の期限が10か月より先に来る、という順番だ。

判断材料は農地は相続放棄できる?放棄後も残る管理義務の話、田んぼに絞った比較は田んぼを相続したくないときに取れる4つの手にある。

選択肢1。自分で耕すか、貸す

耕す側に回るなら、相続税の納税猶予が視野に入る。農業を営む相続人が一定の農地を取得した場合に、農業投資価格を超える部分の納税が猶予される(国税庁・タックスアンサーNo.4147)。

貸す場合は、入ってくる金額の水準が先に分かる。標準小作料の廃止後、農地法第52条にもとづいて農業委員会が地域の賃借料の実勢を公表しているからだ。

公表元対象10アール当たりの年額
豊田市農業委員会(令和7年度)水田・地区別の平均約5,450円〜約27,369円
三股町農業委員会(令和6年)田(水稲)平均約8,600円(約1,400円〜約22,300円)
三股町農業委員会(令和6年)畑(普通畑)平均約4,400円(約1,800円〜約11,500円)

(豊田市/三股町/北海道池田町、2026年7月30日確認)

10アールは1,000平方メートル、約300坪だ。300坪の田を貸して年に1万円前後という水準で、固定資産税は所有者のまま残る。

その手当てが農地中間管理機構(農地バンク)への貸付だ。所有する全ての農地(面積1,000平方メートル未満の自家消費用農地を除く)を新たにまとめて貸し付けると、固定資産税が3年間2分の1に軽減される。対象は貸付けの設定が2016年4月1日から2028年3月31日までのもの(藤沢市、2026年7月30日確認)。

選択肢2。農地のまま売るか、転用して売るか

農地のまま売る場合は、買い手の側に農地法第3条の許可が必要だ。ここは2023年4月1日に緩み、令和4年法律第56号により農地法第3条第2項第5号の下限面積要件が撤廃された。それまでは取得後の経営面積が都府県で50アール以上にならないと許可が出なかった(前橋市/盛岡市、2026年7月30日確認)。

前橋市は市内全域を40アールに設定していたと公表している。ただし全部効率利用要件、常時従事要件、地域との調和要件は残り、投機目的や資産保有目的の取得はできない(高山市、2026年7月30日確認)。買い手として耕す人を探す必要は消えていない。

宅地や駐車場として売るなら転用の許可が前提で、区分によっては申請しても下りない。手続きと期間、費用は農地転用とは?費用と期間、許可が下りる条件をまとめて解説で扱っている。

取得費加算は、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの譲渡が要件だ(国税庁・タックスアンサーNo.3267)。申告期限が10か月なので通算3年10か月の窓になる。中身は相続した土地を売る税金|取得費加算と3年10か月の期限にある。

転用のあとの使い道から逆算したいとき

転用の可否と、転用できた場合にいくらで回るのかを別々に調べると二度手間になります。活用プランと収支の試算を複数社から取り寄せておけば、区分の相談を農業委員会に持ち込むときの材料が揃います。

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選択肢3。国に引き取ってもらう

相続や遺贈で取得した土地を、要件を満たせば国に引き取ってもらえる制度がある。かかるのは審査手数料と負担金の2つだ。

  • 審査手数料は土地一筆当たり14,000円。申請時に収入印紙で納付する
  • 負担金は20万円が基本。ただし市街化区域または用途地域が定められている地域内の農地、農用地区域内の農地、土地改良事業等の施行区域内の農地は面積に応じて算定される

(法務省・相続土地国庫帰属制度、2026年7月30日確認)

却下されるのは、建物がある土地、担保権や使用収益権が設定された土地、他人の利用が予定されている土地、土壌汚染がある土地、境界が明らかでない土地。承認されない事由には、一定の崖があって管理に過分な費用がかかる土地、管理を阻害する有体物が地上や地下にある土地が並ぶ。

実家じまいナビ編集部 実家じまいナビ編集部の実体験

出口を全部当たった結果として保有が残った。順番は逆にできた

編集部の運営者が相続したのは農地ではなく沖縄の傾斜地だ。売却、寄付、国庫帰属と順に当たって、どれも成立せず、いまも保有している。傾斜と接道の弱さ、造成費が土地の値段を超えるという条件が動かなかった。国庫帰属の不承認事由に崖が挙がっているのを後から読んで、当たる順序を間違えたと思った。

何もしないと固定資産税が約1.8倍になる分岐がある

耕作されておらず今後も耕作されないと見込まれる農地、農業上の利用の程度が周辺地域に比べて著しく劣る農地は遊休農地とされ(農地法第32条第1項)、所有者に利用意向調査が行われる。ここで機構への貸付けの意思を示さず耕作も再開しない場合に、農業委員会が機構と協議すべきことを勧告する。1月1日時点でこの協議勧告を受けていると、固定資産税が通常の約1.8倍になる(藤沢市/都留市/朝来市、2026年7月30日確認)。

上がる仕組みは評価にある。通常の農地は売買価格に0.55(限界収益率)を乗じて評価するところ、勧告を受けた遊休農地はこの0.55を乗じない。結果として1.8倍になる(農林水産省/上野原市、2026年7月30日確認)。

戻す道も決まっている。勧告後に、遊休農地が解消されたと確認された、機構が借り入れた、裁定により機構が農地中間管理権を取得した、のいずれかに当たれば勧告は撤回され、翌年度以降の課税は元に戻る。

対象は農業振興地域内の再生可能な遊休農地に限られる。利用意向調査の段階で機構への貸付けの意思を表明していれば、機構側の事情で貸付けが行われなくても勧告はされない。

相続税は税理士の領域。自分で見るのは区分だけ

農地の相続税評価は4つに分かれる。純農地と中間農地は固定資産税評価額に国税局長が定める倍率を乗じる倍率方式、市街地周辺農地はその農地が市街地農地であるとした場合の価額の80パーセント、市街地農地は宅地比準方式または倍率方式で評価する(国税庁・タックスアンサーNo.4623、2026年7月30日確認)。

押さえるのは、同じ地目でも市街地に近いほど評価が宅地の側に寄るという方向だけでいい。市街化調整区域の純農地は低く、市街化区域の市街地農地は高く出やすい。

猶予を取るかどうかを10か月の中で決めるとき

農地の納税猶予は、申告期限までに手続きを済ませることが前提です。相続税がかかるかどうかの相談だけでも使えるので、猶予の可否と申告の要否を同じ場で確かめられます。

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細かい疑問への答え

登記の地目は畑だが、現況はもう宅地や資材置場になっている

過去に転用の許可を得ていれば地目変更登記の漏れなので、法務局の手続きになる。許可を取らずに転用されていた場合は違反転用の扱いで、別の話だ。分かれ目は農地転用とは?費用と期間、許可が下りる条件をまとめて解説にある。

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実家じまいナビ編集部です。運営者自身が沖縄に売れない土地を相続し、出口が見つからないまま維持している当事者です。役所と業者を回って分かった順番、実際にかかる費用、先に知っておけば防げたことを記録しています。法令の解釈が必要な部分は断定せず、調べ方と相談先を示す方針です。

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