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墓じまいの費用は誰が払う?兄弟と本家の負担の決め方

墓じまいの費用は誰が払う?兄弟と本家の負担の決め方

墓じまいの費用を誰が払うかについて、負担者を定めた条文はない。法律が決めているのは墓を継ぐ人までで、費用の分担義務はどこにも書かれていない。

民法897条が定めるのは承継者だけで、その人に兄弟へ請求する権利までは与えていない。先に決まるのは金額ではなく、墓地の名義人が誰かになる。

この記事の目次
  1. 法律が決めるのは「継ぐ人」まで。「払う人」の条文はない
  2. 先に確認するのは名義人。手続きは名義人からしか動かない
  3. 費用を4つに割ると、負担の話が具体になる
  4. 実際の負担パターンは4通り。詰まる場所がそれぞれ違う
  5. 相続財産から出すとき、税では戻ってこない
  6. 兄弟で割るときの基準。頭割りが公平とは限らない
  7. 話し合いの順番。金額を出す前に負担の話を始めない
  8. 誰も払わないまま置くと、決定権が墓地側へ移る
  9. 公営墓地なら戻るお金と免除がある。ただし自治体差が大きい
  10. 負担できる額に収まらないとき、どこから削るか

法律が決めるのは「継ぐ人」まで。「払う人」の条文はない

墓じまいの費用について、負担者を名指しした規定は民法にも墓地埋葬法にもない。あるのは、墓そのものを誰が引き継ぐかを決める規定だけだ。

民法第897条は、系譜、祭具及び墳墓の所有権について、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継し、被相続人の指定があるときはその者が承継すると定める。慣習が明らかでないときは家庭裁判所が定める(e-Gov法令検索、2026年7月30日確認)。墓は相続財産ではなく、祭祀財産として別枠で動く。

法律が決めていること法律が決めていないこと
墓を承継する人(指定→慣習→家庭裁判所の順)撤去費や改葬費を誰が負担するか
遺骨を動かすには市町村長の許可が要ること承継者が他の親族へ費用を請求できるか
公営墓地を使える人の資格(条例で定める)兄弟で均等に負担すべきかどうか

結論は2つ。承継者になっても、兄弟へ費用を請求する権利が条文で用意されているわけではない。同時に、承継者以外が出してはいけないという制限もない。分担は合意でしか決まらない。

先に確認するのは名義人。手続きは名義人からしか動かない

遺骨を別の墓地へ移すには市町村長の改葬許可が要る(墓地、埋葬等に関する法律第5条第1項)。同法施行規則第2条第1項は、申請書に死亡者の情報、改葬の理由と場所に加えて、申請者の住所氏名、死亡者との続柄、墓地使用者等との関係を書かせる。同条第2項第2号は、申請者が墓地使用者等でないときに、改葬についての承諾書か、これに対抗できる裁判の謄本等の添付を求めている(e-Gov法令検索、2026年7月30日確認)。

  • 町田市は、申請できるのは現在の墓地の使用者(契約者、名義人)で、それ以外が申請する場合は墓地使用者の承諾書が必要としている
  • 八王子市は、使用者本人以外が申請するときは申請書の承諾欄に使用者本人の直筆署名を求めている
  • 横浜市は、墓地使用者と申請者が異なる場合に委任状または承諾書が必要としている

いずれも各市の公式ページで2026年7月30日に確認したもの。様式と添付書類は自治体ごとに違う。

公営霊園ではもう一段きつい。東京都霊園条例第6条第1項第2号は、使用資格の一つとして祖先の祭祀を主宰すべき者であることを挙げている。名義は、払える人ではなく祀る人に付く。名義人が亡くなったままなら、承継の手続き(同条例第19条)を済ませない限り、返還も改葬も入口で止まる。

相談者相談者
費用は兄弟3人で割る方向で話がついたのですが、名義は亡くなった父のままです。
実家じまいナビ編集部実家じまいナビ編集部
その状態では改葬許可の申請者が立てられない。負担割合より先に、名義を誰に移すかを決める順番になる

費用を4つに割ると、負担の話が具体になる

区分金額を決めているもの事業者が公表する目安
墓石の撤去と原状回復区画の面積、重機が入るか、階段や傾斜1平方メートルあたり8〜15万円程度
寺院・霊園に渡す分閉眼供養のお布施、檀家をやめる場合の離檀料お布施3〜10万円程度、離檀料5〜20万円程度
役所の手続き改葬許可申請、埋蔵証明、住民票などの取得手数料の有無と額は自治体ごとに異なる
新しい行き先遺骨の体数と、供養の方式合葬の永代供養5〜30万円程度、樹木葬10〜80万円程度、納骨堂20〜100万円程度

目安は葬儀事業者や寺院が公表しているもので、総額としては50〜300万円程度という幅で示されることが多い(小さなお葬式、證大寺BATON、2026年7月30日確認)。幅が大きいのは地域差ではなく、区画の面積と遺骨の体数、行き先の選び方で桁が動くためだ(墓じまいの費用は総額いくら?撤去と供養の内訳)。

面積と体数を伝えて、撤去費の幅を先に出す

負担割合を話し合う前に、総額のレンジだけでも手元にあると議論が早い。区画の面積と遺骨の体数を伝えて、地域の石材店から見積もりを取り寄せておく。

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実際の負担パターンは4通り。詰まる場所がそれぞれ違う

① 名義人(祭祀承継者)が全額を出す

手続きと支払いが一人に揃うのでいちばん早い。詰まるのは金額が想定を超えたときで、承継者は条文上の請求権を持たないため、後から頼んで断られたら終わる。全額を持つなら、見積もりが出る前に上限を決めておく。

② 兄弟姉妹で分ける

負担感は平準化するが、支払いのタイミングがずれる。石材店への着手金、寺へのお布施、行き先の使用料は支払先も期日も別なので、誰がいったん立て替えるかを先に決める。立て替えた人が回収できないのがいちばん多い失敗だ。

③ 相続財産から出す

相続人全員の同意があれば遺産から支出できる。詰まるのは遺産分割が終わった後に墓じまいの話が出る場合で、分けたお金から出し直す交渉になる。分割協議の段階で墓の扱いを議題に入れるほうが軽い。

④ 生前に本人が用意しておく

本人が元気なうちに払い切るか、費用相当を残す形。承継者が決まっていない家ではいちばん揉めない。詰まるのは金額が読めない点で、行き先を決めずに現金だけ残すと、残された側が結局その選択で悩む。

相続財産から出すとき、税では戻ってこない

国税庁のタックスアンサーNo.4129は、相続財産から控除できる葬式費用として火葬や埋葬、納骨にかかった費用、遺体や遺骨の回送費用、寺院への読経料などを挙げる一方、墓石や墓地の買入れのためにかかった費用、墓地を借りるためにかかった費用、香典返し、初七日などの法事の費用は控除できないとしている(令和7年4月1日現在法令等、2026年7月30日確認)。墓じまいの撤去費や新しい行き先の使用料は、葬式費用の枠に入る性質のものではない。

No.4108は墓地や墓石、仏壇、仏具など日常礼拝をしている物を相続税の非課税財産として挙げているが、これは物そのものの評価の話で、撤去や改葬に支払った金額が控除になるという意味ではない。

効くのは税ではなく書面の側だ。遺産分割協議の段階で、墓じまいの費用を誰がいくら負担し、その分を取得分にどう反映するかを文言として残す。

兄弟で割るときの基準。頭割りが公平とは限らない

  • 撤去費は区画に1回だけかかる。誰の先祖の分という割り方ができない
  • 行き先の使用料は遺骨の体数で積み上がる。人ごとに割り当てができる
  • 離檀料と閉眼供養のお布施は家に紐づく。付き合いを続けてきた人とそうでない人で受け止めが違う
  • 交通費、立ち会う手間、書類の取り寄せは動いた人に偏る。見積書に出ない分、忘れられやすい

割り方の型は、頭割り、法定相続分に合わせる、取得した遺産の額に応じて配分する、動いた人の実費と手間分を先に差し引いて残りを人数で割る、のいずれかが現実的だ。

合意した内容は書面にする。書式に決まりはなく、総額の見込みと上限、内訳ごとの負担者、支払いの時期と方法と立替者、見積もりが上振れしたときの扱い、墓地の名義、遺骨の行き先が入っていれば足りる。

話し合いの順番。金額を出す前に負担の話を始めない

  1. 名義人を確認する。使用許可証か管理料の請求書で分かる。亡くなっていれば承継の手続きが先になる
  2. 遺骨の体数を墓地管理者に確認する。ここが行き先の金額を決める
  3. 行き先の候補を2つ以上出す。合葬、樹木葬、納骨堂、手元供養で桁が変わる
  4. 撤去の見積もりを2〜3社から取る。面積と立地が同じでも金額は割れる
  5. 金額が出てから、負担案を出す。ここで初めて割合の話になる
  6. 合意を書面にする。上振れの扱いを含めて書く

反対されている段階なら、負担の話はまだ早い。反対の理由は費用ではなく、相談されなかったことや行き先への不安であることが多い(墓じまいを親族に反対されたときの説明の順番)。

誰も払わないまま置くと、決定権が墓地側へ移る

東京都霊園条例第21条第3号は、管理料を5年間納付しないときを使用許可の取消事由として挙げている。東京都公園協会も、5年以上滞納すると使用許可の取消対象となり、行政手続きを経て最終的に東京都が墓所を更地にし、遺骨は無縁塚に改葬されると案内している(2026年7月30日確認)。

ただし管理者も勝手には動かせない。墓地、埋葬等に関する法律施行規則第3条は、無縁墳墓等の改葬にあたって1年以内に申し出るよう官報に掲載し、墓地の見やすい場所に立札を設けて公告したうえで、申し出がなかった旨の書面、官報の写し、立札の写真、無縁墳墓等の写真と位置図を添えるよう定めている。

撤去の負担も消えない。東京都霊園条例第16条は、使用しなくなったときは直ちに知事に届け出るとともに当該施設を原状に回復しなければならないと定める。更地に戻す義務は使用者に残り、放置している間も管理料は積み上がる(墓じまいとは?費用と流れ、遺骨の行き先の決め方)。

公営墓地なら戻るお金と免除がある。ただし自治体差が大きい

使用料が戻る型(千葉県市川市)

市川市の一般墓地返還促進事業は、市川市霊園の一般墓地を返還する使用者を対象に、使用許可後3年以内に未使用(更地)で返還した場合は納付した使用料の2分の1、それ以外は4分の1を返還するとしている。原状回復費用の助成もあり、上限は芝生墓地75,000円、普通墓地は2.5平方メートルの210,000円から12.0平方メートルの440,000円まで。ただし令和8年5月22日現在、予算額に達したため受付を終了したと告知されている(2026年7月30日確認)。

行き先の使用料が免除になる型(東京都)

東京都霊園条例第15条は、既に納付された使用料と管理料を原則として還付しないとしている。一方で施設変更制度があり、使用中の墓所を返還して遺骨を都の合葬式墓地へ改葬する場合、同条例第20条の2第3項が変更後の合葬埋蔵施設等に係る使用料は徴収しないと定める。東京都公園協会の案内も、使用料と年間管理料は不要としたうえで、更地にする費用は使用者の負担と明記している(2026年7月30日確認)。

撤去費の幅が分かると、分担案が作れる

制度で削れるのは主に行き先の費用で、撤去費は自分たちで持つ前提になる。撤去の金額を地域の石材店から複数取り寄せて、分担の土台になる数字を固める。

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負担できる額に収まらないとき、どこから削るか

  • 行き先の方式を下げる。墓石を建て直す形は事業者公表の目安で100〜300万円程度、納骨堂20〜100万円程度、樹木葬10〜80万円程度、合葬の永代供養5〜30万円程度(證大寺BATON、2026年7月30日確認)。体数が多いほど差が大きい
  • 公営の制度を当たる。使用料が戻る自治体と、行き先の使用料が免除になる制度がある。ただし予算と年度で動く
  • 撤去は相見積もりで幅を見る。面積で決まる部分は削れないが、同じ区画でも社によって金額は割れる
  • 寺に渡す分は名目を分けて確認する。閉眼供養のお布施と離檀料は別で、離檀料に定価はない。折り合いがつかない場面は弁護士の範囲になる

合葬式墓地は他の方の遺骨と合わせて埋蔵する方式で、都立霊園の施設変更制度でも共同埋蔵と呼ばれている(東京都公園協会、2026年7月30日確認)。金額はいちばん低いが、あとで個別に移す前提では選べない。行き先は金額だけでなく、戻せるかどうかを並べて決める。

改葬許可の申請に期限を定めた規定はない。一方で申請書には改葬の場所を書く欄があるので(施行規則第2条第1項第6号)、行き先が決まらないうちに手続きだけ先に進めることはできない。立て替えの請求や祭祀承継者の申立て(民法897条2項)は弁護士、税額は税理士、申請の様式と手数料は市区町村の窓口が確認先になる。制度と金額はいずれも2026年7月30日時点のものだ。

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実家じまいナビ編集部

実家じまいナビ編集部 |沖縄に売れない土地を持つ当事者が運営

実家じまいナビ編集部です。運営者自身が沖縄に売れない土地を相続し、出口が見つからないまま維持している当事者です。役所と業者を回って分かった順番、実際にかかる費用、先に知っておけば防げたことを記録しています。法令の解釈が必要な部分は断定せず、調べ方と相談先を示す方針です。

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