空き家の固定資産税が6倍になる条件と回避の順番

空き家の固定資産税が6倍になる、という言葉だけが先に耳に入っている状態だと思います。
上がるのは自治体の勧告を受けた翌年度からで、対象は土地の分だけです。負担調整の上限が効くため、神戸市の計算例では年5万円が17万8,500円、約3.6倍でした。指導の段階で直せば動きません。
この記事の目次
上がるのは土地の分だけ。住宅用地の特例が外れる仕組み
上がるのは家屋ではなく土地の課税標準です。住宅が建っている土地には住宅用地の特例が付いていて、これが外れると課税標準額が跳ね上がります。特例は面積で二段に分かれます(出典:国土交通省 住宅用地特例に係る空き家対策上の措置/総務省 固定資産税、都市計画税の特例率は大阪市 住宅用地の課税標準の特例措置・2026年7月30日確認)。
| 区分 | 面積 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 住宅1戸あたり200平方メートル以下の部分 | 価格の6分の1 | 価格の3分の1 |
| 一般住宅用地 | 200平方メートルを超える部分 | 価格の3分の1 | 価格の3分の2 |
大阪市は、住宅用地として認定されるのは家屋の延べ床面積の10倍までと案内しています。都市計画税は市街化区域内にかかる税なので、区域外の実家では固定資産税だけを見ます。
6倍にはならない。上限70パーセントの負担調整が挟まる
6倍という数字は、6分の1にしていたものが1に戻るという計算から出ています。実際の納税通知書はそうなりません。特例が外れた宅地は商業地等として扱われ、課税標準額には評価額の70パーセントを上限とする負担調整措置が入ります(出典:総務省 固定資産税の概要・2026年7月30日確認)。
神戸市は、特例が解除されると土地の固定資産税は一般的に3.5倍程度になると案内し、市街化区域・敷地100平方メートル・評価額1,500万円の計算例を公開しています(出典:神戸市 空き家の敷地にかかる固定資産税・2026年7月30日確認)。
| 税目 | 特例あり | 特例が解除された場合 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 固定資産税 | 35,000円 | 147,000円 | 4.2倍 |
| 都市計画税 | 15,000円 | 31,500円 | 2.1倍 |
| 合計 | 50,000円 | 178,500円 | 約3.6倍 |
6分の1が満額で効いていた土地なら、土地の固定資産税は4.2倍が天井の目安になります。
免税点もあります。課税標準額が土地30万円、家屋20万円に満たなければ課税されません。判定は同一名義人が所有する土地の合計なので、同じ市区町村に別の土地があると超えます(出典:一宮市 固定資産税の免税点・2026年7月30日確認)。免税点未満の土地・家屋には都市計画税も課税されません(出典:東京都主税局 固定資産税・都市計画税・2026年7月30日確認)。畑や田が付いている実家では、宅地と農地を分けて考えます(農地の固定資産税はいくら?宅地に変えると何倍になるか)。
いつから上がるのか。1月1日と勧告の関係
上がる年度は賦課期日の1月1日で決まります。東京都主税局は、特定空家等または管理不全空家等に該当し、1月1日までに勧告に対する必要な措置が講じられない家屋の敷地は、住宅用地の特例の適用対象から除外されると案内しています(出典:東京都主税局 特定空家等または管理不全空家等に該当すると税額が高くなる場合があります・2026年7月30日確認)。
- 助言・指導(管理不全空家等は指導)が届く。この段階では税は動かない
- 状態が改善されないと勧告が出る
- 勧告に対する措置を1月1日までに講じなければ、その年度の課税から特例が外れる
- 措置を実施すれば勧告は撤回され、要件を満たす敷地は特例の対象に戻る
4はガイドラインにあります。措置を実施したと確認されれば管理不全空家等ではなくなり、市町村は勧告を撤回し、要件を満たす敷地は特例の適用対象となるため税務部局へ速やかに情報提供すると書かれています(出典:国土交通省 管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する指針・2026年7月30日確認)。
勧告まで来るのは指導の1割。実績の件数で距離を測る
国土交通省と総務省が公表している空家法の施行状況から、令和7年3月31日時点(調査対象1,741市区町村)の累計件数です(出典:国土交通省・総務省 空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について/掲載ページ・2026年7月30日確認)。
| 措置 | 特定空家等 | 管理不全空家等 |
|---|---|---|
| 助言・指導(管理不全空家等は指導) | 42,768件 | 3,211件 |
| 勧告 | 4,153件 | 378件 |
| 命令 | 551件 | 制度上なし |
| 行政代執行 | 286件 | 制度上なし |
| 略式代執行 | 592件 | 制度上なし |
| 緊急代執行 | 12件 | 制度上なし |
税が動くのは勧告からなので、指導の段階なら止められます。改正法の施行日は令和5年12月13日で(出典:国土交通省 空家法の一部を改正する法律について・2026年7月30日確認)、令和5年度の勧告は0件、令和6年度は378件(40市区町村)。指導も令和5年度666件から令和6年度2,545件へ増えています。
何を見て指導や勧告が決まるのか。ガイドラインの状態の例
入口は倒壊しそうな家だけではありません。管理不全空家等は特定空家等になる前の段階なので、基準が手前にあります(出典:前掲の国土交通省ガイドライン 別紙1から別紙4・2026年7月30日確認)。
| 放置した場合の悪影響 | 管理不全空家等の状態の例 | 特定空家等の状態の例 |
|---|---|---|
| 建築物の倒壊 | 屋根の変形、外装材の剥落または脱落/構造部材の破損、腐朽、蟻害、腐食/雨水浸入の痕跡 | 倒壊のおそれがあるほどの著しい傾斜(目安は20分の1超)など |
| 石綿の飛散 | 吹付け石綿の周囲の外装材または石綿使用部材の破損等 | 飛散の可能性が高い吹付け石綿の露出など |
| 景観の悪化 | 屋根ふき材、外装材、看板等の色褪せ、破損または汚損/散乱または山積したごみ等 | 著しい色褪せ、破損または汚損/著しく散乱し、または山積したごみ等 |
| 悪臭の発生 | 排水設備の破損等または封水切れ/常態的な動物の棲みつき、多量の腐敗したごみ等 | 汚水等による悪臭の発生/著しい排水設備の破損等 |
| 不法侵入 | 開口部等の破損等 | 不法侵入の形跡/容易に侵入できるほどの著しい開口部等の破損等 |
| 立木による支障 | 剪定等がなされておらず、立木の枝等のはみ出しが認められる状態 | 通行の妨げ等のおそれがあるほどの著しいはみ出し |
| 落雪 | 通常の雪下ろしがなされていない状態/雪止めの破損等 | 頻繁な落雪の形跡/著しい堆雪または雪庇 |
ガイドラインは総合的に判断するとしており、1項目で即指定とも、1項目を直せば外れるとも書かれていません。
解体すると翌年から上がる。1月1日の位置と自治体の減免
解体すればその敷地は住宅用地ではなくなり、賦課期日は1月1日なので、いつ壊すかで最初に上がる年度が変わります。国土交通省は令和5年12月13日付けの事務連絡で、増加する固定資産税等の負担軽減措置を設けている市町村の例を示しています(出典:国土交通省住宅局住宅総合整備課 事務連絡・2026年7月30日確認)。
| 自治体 | 減免の内容 | 期間 |
|---|---|---|
| 群馬県千代田町 | 住宅用地特例の適用を受けるものとみなして算出した額との差額相当分 | 除却した日の属する年の翌年1月1日を賦課期日とする年度から3年間 |
| 福岡県志免町 | 住宅用地の特例が適用された場合の賦課相当額との差額 | 特例が解除される年度から起算して3年度分 |
| 岩手県宮古市 | 特例が解除となって増加した差額分 | 特例適用がされなくなった年度とその翌年度(最長2年度分) |
千代田町の要綱は、除却の時期、申請者が所有者またはその相続人であること(法人は対象外)、町税等の滞納がないこと、除却後に営利目的で使用していないことを要件にしています(出典:千代田町 空き家除却後の減免/志免町/宮古市・2026年7月30日確認)。八千代市のように、昭和56年5月31日以前に着工された旧耐震基準の空き家に限る自治体もあります(出典:八千代市・2026年7月30日確認)。減免と解体補助は別の制度で、窓口も別です(空き家の解体補助金はいくら出る?条件と申請の順番)。
貸すと特例は続く。ただし3000万円控除は消える
賃貸を入れると、税の動きが二方向に分かれます。固定資産税の側は有利です。住宅用地の特例は住宅やアパートなど住宅用の家屋の敷地に付くので(前掲の大阪市の案内)、人が住む状態が続けば特例は外れず、管理不全にもなりにくくなります。
売却の側は不利になります。空き家の3000万円特別控除は、相続の時から譲渡の時まで、事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないことを要件にしています(出典:国税庁 No.3306・2026年7月30日確認)。相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日という期限の中で売れる見込みが立たないなら賃貸が候補に入り、立つなら貸さずに売るほうが手取りは大きくなります。
回避の順番。上から順に確かめる
順番を間違えると、直す時間が足りないまま1月1日を越えます。
- 課税明細書を出し、土地の評価額と課税標準額から特例が今かかっているかを見る。読み取れなければ資産税担当に地番で聞く
- 役所からの文書の題名を確認する。助言・指導か勧告か。勧告なら措置の内容と期限がその文書にある
- 指導の段階なら、書かれた措置を1月1日より前に終える。ここで直せば税は動かない
- 直せないなら出口を決める。売る、貸す、解体するで税の動き方が変わる
- 売る方針なら、空き家の3000万円特別控除の期限を先に確認する
5の期限は2本です。相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、かつ平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間の譲渡であること。売却代金が1億円以下、家屋が昭和56年5月31日以前の建築、相続の開始の直前に被相続人以外の居住者がいなかったことなどの要件も付き、令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上なら控除額は2,000万円です(出典:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例・2026年7月30日確認)。要件の当てはめは税理士か税務署の範囲です(実家を売ったときの税金|3000万円控除で0円になる条件)。
編集部は法令の解釈も個別の税額計算もしません。先に当たるのは資産税担当課です。課税の内容は本人か代理人にしか答えられないため、納税通知書を手元に置いてから電話します。
| 聞く相手 | 聞くこと |
|---|---|
| 資産税担当課 | 特例が今かかっているか。外れた場合の税額。解体後の減免の有無と要件 |
| 空き家担当課 | 届いた文書が助言・指導か勧告か。措置の内容と期限。撤回の手続き |
| 税理士・税務署 | 3000万円特別控除や取得費加算の要件に当たるか |
| 不動産会社 | 現状のまま売れるか、更地にしたほうが売れるか |
払えない場合の窓口は納税担当課です。地方税法では、納期限までに納付されないと納期限後20日以内に督促状が発せられ、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは財産を差し押えなければならないとされています(出典:習志野市 法令に基づく滞納処分について・2026年7月30日確認)。
