小規模宅地等の特例で80%減|実家に使える条件

実家の土地の評価を80%下げられるかどうかは、誰がその土地を取得するかでほぼ決まります。
被相続人が住んでいた宅地なら330平方メートルまで80%減。配偶者は取得者ごとの要件がなく、同居していた親族は申告期限まで居住と保有を続けること、別居の子は6つの要件をすべて満たすことが条件です。減るのは相続税の評価額だけで、固定資産税は動きません。
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実家の土地は330平方メートルまで80%減。減るのは相続税の評価額だけ
正式な名前は、相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例。被相続人または生計を一にしていた親族の事業用・居住用だった宅地等について、一定面積まで相続税の課税価格に算入すべき価額を減額します(出典:国税庁 No.4124・2026年7月30日確認)。
| 相続開始の直前の利用区分 | 区分の名前 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|---|
| 被相続人等が住んでいた宅地 | 特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
| 被相続人等の事業用(貸付け以外) | 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 一定の同族会社の事業用 | 特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 被相続人等の貸付事業用 | 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
実家の土地が当たるのは、いちばん上の特定居住用宅地等。330平方メートルは約100坪です。
対象は建物または構築物の敷地の用に供されている宅地等で、農地・採草放牧地、棚卸資産とこれに準ずる資産は除かれます(同)。畑や山林、建物の建っていない土地には出番がありません。相続時精算課税に係る贈与で取得した宅地等、相続開始前3年以内に新たに貸付事業や事業に供した宅地等も対象外。ただし3年超の特定貸付事業を行っていた土地と、建物や減価償却資産の価額が宅地等の価額の15%以上という一定規模以上の事業の土地は除外されません(同)。
評価を下げる話と、毎年出ていく税が別物だと分かるまで時間がかかった
編集部の運営者が相続したのは沖縄の傾斜地です。評価が下がる制度を探しましたが、毎年出ていく固定資産税の約7万円は評価減の条文を読んでも動きませんでした。相続税は一度だけ、固定資産税は毎年です。
その前に。相続税がかかる家は10.4%しかない
遺産に係る基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です(出典:国税庁 No.4152・2026年7月30日確認)。法定相続人が3人なら4,800万円。課税価格の合計額がこれ以下なら相続税はかかりません。令和6年分の課税割合は10.4%(令和5年分は9.9%)で、被相続人1人当たりの課税価格は1億4,025万円です(出典:国税庁 令和6年分 相続税の申告事績の概要・2026年7月30日確認)。
土地は路線価方式か倍率方式で評価します。倍率方式は路線価のない地域の方法で、固定資産税評価額に倍率を乗じます。家屋は固定資産税評価額と同じです(出典:国税庁 No.4602・2026年7月30日確認)。どちらの地域かは路線価図・評価倍率表で確認できます(出典:国税庁 路線価図・評価倍率表・2026年7月30日確認)。
編集部は税額計算や要件の当てはめを判断しません。基礎控除に近い金額なら税理士に投げるほうが早い。判定の目安は実家に相続税はかかる?基礎控除で0円になる目安に分けています。
誰が取得するかで結論が変わる。配偶者・同居親族・別居親族の3通り
当たるかどうかは、土地の側ではなく取得した人の側の条件で決まります(出典:国税庁 No.4124・2026年7月30日確認)。
| 取得者 | 取得者ごとの要件 |
|---|---|
| 被相続人の配偶者 | 取得者ごとの要件はありません |
| 被相続人が住んでいた一棟の建物に居住していた親族 | 相続開始の直前から申告期限までその建物に居住し、宅地等を相続開始時から申告期限まで有すること |
| 上記以外の親族(いわゆる家なき子) | 下の(1)から(6)をすべて満たすこと |
- 居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと
- 被相続人に配偶者がいないこと
- 相続開始の直前に被相続人が住んでいた家屋に居住していた相続人(放棄があった場合は、なかったものとした場合の相続人)がいないこと
- 相続開始前3年以内に、国内で取得者・その配偶者・三親等内の親族・特別の関係がある一定の法人が所有する家屋(被相続人の家屋を除く)に居住したことがないこと
- 相続開始時に取得者が居住している家屋を、相続開始前のいずれの時にも所有していないこと
- その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること
(2)と(3)が実家の場面を決めます。配偶者が健在なら別居の子は使えず、同居していた相続人がいる場合も使えません。親が一人で暮らした実家を持ち家のない子が引き継ぐ形が、この6本を通る型です。生計を一にしていた親族が住んでいた宅地等という枠も別にあり、配偶者かその親族が取得し申告期限まで居住と保有を続けることが要件です(同)。
実家で落ちるのは、同居の中身と持ち家の判定
同居かどうかは、建物の登記の状態で範囲が変わる
一棟の建物が区分所有建物である旨の登記がされていない建物なら、その敷地のうち親族が居住していた部分も含めて判定します。区分所有建物である旨の登記がされている建物では、同居していた親族に当たるのは被相続人の居住部分に住んでいた親族です(出典:国税庁 No.4124・2026年7月30日確認)。
二世帯住宅はここで分かれます。1階を親、2階を子で区分所有登記していると、子は被相続人の居住部分に住んでいた親族に当たりません。構造ではなく登記を見るので、先に登記事項証明書を取ります。
同居の判定は、住民票の記載だけでは決まらない
法令の文言は、申告期限まで引き続きその建物に居住していることです(同)。住民票を同じ住所にしていれば足りる、とは書かれていません。
持ち家の判定は、自分の家だけの話ではない
(4)は配偶者の家も三親等内の親族が所有する家も見ます。持ち家を売って賃貸に移った場合も(5)に当たるため、売った先が誰かで結論が変わります。
老人ホームで空き家だった実家も対象に残る。ただし判定する日が違う
親が施設に入り、実家が空き家のまま相続が起きた場合も含まれます。要介護認定または要支援認定を受けていた被相続人が次の施設に入居・入所していた場合、居住の用に供することができない一定の事由に当たり、その直前の居住の用を含めて判定します(出典:国税庁 No.4124・2026年7月30日確認)。
- 認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム
- 介護老人保健施設、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅(有料老人ホームに当たるものを除く)
障害支援区分の認定を受けて障害者支援施設等に入所していた場合も同じ。ただし、その後にその家屋を事業の用に供した場合や、被相続人等以外の人の居住の用に供した場合は外れます(同)。空き家のままなら残り、賃貸に出すと落ちます。
認定を受けていた日をいつで見るかが、譲渡所得の特例とずれている
この特例では、要介護認定等を相続開始の直前に受けていたかで判定します。入居時点で認定がなくても対象に残ります(出典:国税庁 質疑応答事例・2026年7月30日確認)。
売却側の空き家の3000万円特別控除は、特定事由により居住の用に供されなくなる直前に認定を受けていたかで判定します(出典:国税庁 No.3307・2026年7月30日確認)。判定日が片方は相続の直前、片方は入居の直前でずれるため、同じ実家で片方だけ通ることがあります。売却側は実家を売ったときの税金|3000万円控除で0円になる条件に分けています。
330平方メートルを超えた分は減らない。地方の実家でここが効く
減額されるのは限度面積までの部分で、超えた分は通常どおり課税価格に入ります。仮に敷地500平方メートル、評価額2,500万円で要件を満たす場合、330平方メートル分の1,650万円の80%にあたる1,320万円が減額され、課税価格に入るのは1,180万円。残る170平方メートル分は減りません。実際の評価額は路線価または倍率で計算します(出典:国税庁 路線価図・評価倍率表・2026年7月30日確認)。
複数の区分を選ぶ場合は、限度面積の判定に算式が入ります(出典:国税庁 No.4124・2026年7月30日確認)。
| 選ぶ宅地等 | 限度面積の判定 |
|---|---|
| 特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等(貸付事業用宅地等がない場合) | 特定事業用等は合計400㎡以下、特定居住用は330㎡以下。両方を選ぶなら合計730㎡ |
| 貸付事業用宅地等がある場合 | 特定事業用等×200/400+特定居住用×200/330+貸付事業用≦200㎡ |
敷地の一部を駐車場や賃貸に回していた場合は下の行の調整計算に入り、330平方メートルと200平方メートルを単純に足せません。居住用の宅地等が2つ以上あるときは、主として居住の用に供していた一の宅地等に限られます(同)。
申告期限まで持っていることが条件。売る計画とぶつかる場所
| 取得者 | 申告期限までの居住 | 申告期限までの保有 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 要件なし | 要件なし |
| 同居していた親族 | 必要 | 必要 |
| 別居親族(家なき子) | 要件なし | 必要 |
相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内です(出典:国税庁 No.4208・2026年7月30日確認)。同居していた親族と別居親族が取得する場合、この10か月のあいだに売って引き渡すと保有継続要件から外れます。
売却側の空き家の3000万円特別控除は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが要件で、制度自体は平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡が対象です(出典:国税庁 No.3306・2026年7月30日確認)。売れるのは10か月より後、期限は3年目の12月31日。動かせる窓はこの二つの日付のあいだです。
配偶者が取得した場合だけ保有継続要件がなく、申告期限前に売っても評価減が残ります。誰が取得するかを決める段階で売る時期まで並べます。売却側の期限は相続した土地を売る税金|取得費加算と3年10か月の期限にあります。
税額が0円になっても、申告しないと適用されない
適用には、申告書に適用を受けようとする旨を記載し、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付します(出典:国税庁 No.4124・2026年7月30日確認)。評価減で税額が0円になる場合も、申告そのものは必要です。
対象になり得る宅地等を取得した相続人等が2人以上いる場合は、どの宅地等を選ぶかに全員が同意し、原則として申告期限までに分割されていることが要ります(同)。
分割が間に合わないときは、分割見込書を先に出す
申告は未分割でも期限までに要り、未分割のまま提出する申告ではこの特例と配偶者の税額軽減を適用できません(出典:国税庁 No.4208・2026年7月30日確認)。
提出期限から3年以内に分割して適用を受けるには、申告期限後3年以内の分割見込書を申告書とともに提出します(出典:国税庁 B1-5・2026年7月30日確認)。分割成立で税額が変わった場合の更正の請求は、分割を知った日の翌日から4か月以内。適用は原則として申告期限から3年以内の分割に限られます(出典:国税庁 No.4208・2026年7月30日確認)。
