実家を処分する4つの出口|売る・貸す・解体・手放す
実家の処分は売るか壊すかの二択で語られますが、実際の出口は四つあります。
売る、貸す、解体する、国に引き取ってもらう。判定に効くのは、建物があるかと、その手が戻せるかです。国に引き取ってもらう制度は申請5,698件に対して帰属2,885件(令和8年6月30日時点)で、負担金は原則20万円です。
この記事の目次
実家の処分は四つの出口しかない。建物があるかで選べる数が変わる
| 出口 | 成立する条件 | 出ていくお金 | 戻せるか | 時間 |
|---|---|---|---|---|
| 売る | 名義が済み、境界と建物の書類がそろう | 仲介手数料、印紙税、登記費用。必要なら測量と片づけ | 契約までは戻せる | 数か月から1年 |
| 貸す | 人が住める状態にでき、管理を続けられる | 初期の修繕費と毎月の管理費 | 入居後は戻しにくい | 準備に数か月 |
| 解体 | 解体費を出せ、重機の搬入路がある | 本体工事に付帯工事が乗る。条件で幅が大きい | 戻せない | 数週間 |
| 国に引き取ってもらう | 建物がなく、境界が明らか。担保も利用者もいない | 審査手数料は一筆14,000円。負担金は原則20万円 | 納付で確定 | 審査に8か月程度 |
四つ目の相続土地国庫帰属制度は、建物がある土地は申請できません(出典:法務省 承認申請の要件)。
片づけから墓や仏壇までの全体の流れは実家じまいとは?進め方と費用の全体像を7ステップで解説にあります。
出口を選ぶ前に固定する三つ。名義、共有者、境界
手前に遺言書の確認があります。公正証書遺言と、法務局保管の自筆証書遺言に交付される遺言書情報証明書は検認が不要ですが、封印のある遺言書は家庭裁判所で立会いの上で開封します(出典:裁判所 遺言書の検認)。
名義には期限があります。相続で不動産を取得した相続人は、所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があり、怠ると10万円以下の過料の対象です。施行日前に相続を知っていた不動産は令和9年3月31日までです(出典:法務省 相続登記の義務化)。分割が長引く場合は相続人申告登記で義務を果たせます。
持分だけなら単独で動かせますが、共有物に変更を加えるには他の共有者の同意が必要です(民法第251条。出典:民法)。共有地の国庫帰属も全員での共同申請です。決め方は実家の相続で兄弟ともめない進め方と決める順番にあります。
境界が明らかでない土地は国庫帰属を申請できず、売却でも確定測量図がないと会社が扱いを渋ります。測量費は数万円から数十万円の幅です。
出口①売る。価格を取るか、時期を取るか
売る出口は二つに割れます。仲介は買い手を探す時間と引き換えに市場の価格を狙い、買取は不動産会社が直接買う代わりに時期を確定させます。
建物に値段が付かなくても、買い手が解体して建て替える前提で、現況のまま土地として売れることがあります。解体費はその分が価格から引かれるので、先に壊すのと買い手に壊させるのとで手元に残る額はさほど変わりません。違うのは、先に解体すると固定資産税の住宅用地特例と、家屋の状態を条件にする控除の枠を同時に失う点です。
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出口を決める前に、土地と建物にいくら付くのかを見る
四つのうちどれを選ぶかは、売れる金額が分からないと比べられません。相場を知るだけの利用で構いません。建物に値段が付くのか、更地にしたほうが上がるのかを複数社に聞くと、解体という戻せない一手を打つ前に判断できます。
無料で査定額を調べる出口②貸す。家賃が入る条件と、そこで消える控除
人が住める状態まで直せることと、誰かが管理を続けられることが条件で、給湯器と水回りと屋根の状態で初期の修繕額が動きます。
国土交通省は全国版空き家・空き地バンクを構築していますが、利用条件は自治体ごとに違い、移住促進のため県外からの希望者に限る例もあります(出典:国交省 空き家バンク)。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例は、相続の時から取壊し等の時まで、事業の用、貸付けの用、居住の用に供されていたことがないことを要件にしています(出典:国税庁 No.3306)。一度貸すと、あとで売るときにこの控除の道が閉じます。
出口③解体して更地にする。戻せない代わりに買い手の幅が広がる
解体は、買い手の幅を広げ、国庫帰属の入口を開き、倒壊と近隣への責任を消します。同時に、戻せないことが三つ起きます。
- 住宅用地特例が外れる。特例は課税標準を200平方メートル以下の部分で6分の1、超える部分で3分の1に減額するもので、更地には適用されません(地方税法第349条の3の2。出典:地方税法/出典:国交省 住宅用地特例)
- 時期が翌年度の税に直結する。固定資産税の賦課期日は1月1日です(地方税法第359条)
- 家屋の状態を条件にする控除に届かなくなる場合がある
建設リサイクル法では、建築物の解体工事は床面積80平方メートル以上が分別解体等の義務の対象で、工事着手の7日前までに発注者から都道府県知事へ届け出ます(出典:環境省 建設リサイクル法)。届出義務は工事会社ではなく発注者にあります。
木造と鉄骨と鉄筋コンクリートで単価が変わり、手壊し、ブロック塀や庭石や樹木の撤去、アスベストの調査と除去が乗ります。見積書は本体工事の坪単価ではなく付帯工事の行数を見てください。
出口④国に引き取ってもらう。相続土地国庫帰属制度の実際の通り方
令和5年4月27日に始まりました。相続または相続人への遺贈で土地を取得した人が、法務大臣の承認を受けて所有権を国庫に帰属させられます(出典:法務省 制度の概要)。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 申請できない土地 | 建物がある/担保権や使用収益権がある/他人の利用が予定されている/土壌汚染/境界が明らかでない |
| 承認されない土地 | 一定の崖がある/管理を阻害する工作物が地上にある/有体物が地下にある/争訟が必要/通常の管理に過分の費用や労力を要する |
| 審査手数料 | 一筆14,000円。収入印紙で納付し、返還されない |
| 負担金 | 面積にかかわらず20万円が基準。市街化区域等の宅地、農用地区域等の田畑、森林は面積に応じて算定(宅地100平方メートルで約55万円) |
| 審査期間 | 8か月程度 |
| 納付期限 | 通知到達の翌日から30日以内。未納で承認が失効する |
数値は法務省の資料によります(出典:法務省 法律の概要/出典:法務省 申請の手引き/出典:法務省 負担金)。令和8年6月30日時点で申請5,698件、帰属2,885件、却下83件、不承認93件、取下げ1,063件です。取下げのうち375件は、却下または不承認に当たると判明したものです(出典:法務省 制度の統計)。
四つの出口を順に当たって、どれも成立しなかった土地
編集部は沖縄の傾斜地を相続し、出口が見つからないまま保有しています。固定資産税は年約7万円で、決まらない間も毎年出ていきます。売却、寄付、国庫帰属と順に当たり、傾斜と接道と造成費という同じ理由で全部が止まりました。不承認の事由に並ぶ崖や過分の費用という言葉は、市場で売れない理由とほぼ同じものを指しています。
手放したつもりで残るもの。相続放棄と無償譲渡
相続放棄は、不動産だけを選んで捨てる制度ではありません。相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認か限定承認か放棄を選びます(民法第915条)。申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所で、費用は申述人1人につき収入印紙800円と郵便切手です(出典:裁判所 相続放棄の申述)。
放棄したあとも切れない線があります。放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有していたときは、相続人または相続財産の清算人に引き渡すまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存しなければなりません(民法第940条。出典:民法)。
相続人全員が放棄すると、その空き家は相続人のあることが明らかでない場合として扱われ、略式代執行や相続財産清算人の選任請求の対象になります(出典:国交省・総務省 措置の指針)。
無償で譲る形も出口ですが、受け取る側に税が動きます。個人から財産をもらった人には贈与税がかかり、暦年課税では基礎控除110万円を超える部分が課税対象で、申告と納税は翌年2月1日から3月15日までです(出典:国税庁 No.4402)。
決めないまま置くと、税と行政の側から動き始める
空き家は令和5年10月1日現在で900万2千戸、空き家率13.8%で過去最高です。うち賃貸用と売却用と二次的住宅を除く空き家は385万6千戸で、前回調査から36万9千戸増えました(出典:総務省 住宅・土地統計調査)。
令和5年12月13日施行の改正空家法で、そのまま放置すれば特定空家等に該当するおそれのある空家等が、管理不全空家等として指導と勧告の対象になりました(出典:国交省 空家法関連情報)。勧告を受けた管理不全空家等と特定空家等の敷地は、住宅用地特例から外れます。
倍率は6倍と書かれがちですが、宝塚市は、勧告を受けると特例が解除され土地の固定資産税が約3倍から5倍になる可能性があるとし、増額の割合は敷地の面積等で変動すると注記しています(出典:宝塚市 空家法の改正)。
勧告の前でも、今後人の居住の用に供される見込みがないと認められる住宅は特例の対象外です。措置の実績は平成27年5月から令和5年3月までの累計で勧告3,078件、命令382件、行政代執行180件。
保留を続けるかどうかは、売れる値段が分かってから決める
保留にも税と管理費が毎年かかります。四つのうち手数が少ないのは売却なので、いくらで売れるのかを先に押さえると、保留を続ける費用と比べられます。査定は相場を知るだけの利用で構いません。
無料で査定額を調べる税の要件は、出口の選び方で消える
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例は譲渡所得から最高3,000万円を控除できる枠で、令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は2,000万円に下がります(出典:国税庁 No.3306)。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売却代金が1億円以下。複数の相続人が分けて売った場合も合算で判定する
- 相続の時から取壊し等の時まで、事業の用、貸付けの用、居住の用に供されていたことがないこと
- 耐震基準に適合させるか家屋を取り壊すこと。令和6年1月1日以後の譲渡では、譲渡の時からその翌年2月15日までに行われた場合も対象
枠そのものにも期限があり、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡が対象です。空き家のまま置いた年数が、この期限を削ります。
譲渡所得の内訳書、登記事項証明書、市区町村長から交付を受ける被相続人居住用家屋等確認書、売買契約書の写しなどを添えて確定申告します。相続税の申告と納税は、死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です(出典:国税庁 No.4205)。
やってはいけない順番の入れ替え
- 片づけの前に壊す。権利証、境界の書類、建築確認済証、保険証券は家の中にあります。捨てる基準は遺品が捨てられないときに決めておく3つのルールにあります
- 国が引き取る前提で予定を組む。建物があれば申請できず、手数料は一筆14,000円で返りません
期限のあるものだけ先に並べる。誰に何を聞くか
| 期限 | 内容 |
|---|---|
| 3か月 | 相続の承認または放棄の選択(相続の開始を知った時から) |
| 10か月 | 相続税の申告と納税 |
| 3年 | 相続登記。施行日前に相続を知っていた不動産は令和9年3月31日まで |
| 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日 | 空き家の3,000万円特別控除で売る期限 |
| 令和9年12月31日 | 空き家の特別控除そのものの適用期限 |
| 毎年1月1日 | 固定資産税の賦課期日。更地かどうかがこの日で決まる |
| 工事着手の7日前 | 床面積80平方メートル以上の解体工事の届出 |
| 30日 | 国庫帰属の負担金の納付 |
上の日付は2026年7月30日に一次ソースで確認したものです。
