墓じまいの時期はいつがいい?法要と合わせる考え方

墓じまいの時期を調べても、決まりはありませんとしか出てこなかったはずです。
結論から書くと、法律上の期限はありません。実務上は、法要の日に閉眼供養を重ねたいなら6か月前から動くと無理がない。改葬許可は受入先が決まるまで申請できず、そこが工程の詰まりどころになります。
この記事の目次
墓じまいの時期に、制度上の決まりはない
墓じまいの時期を定めた法律はない。自治体の改葬手続きの案内で指定されているのは書類であって時期ではない。京都市が挙げるのは申請書、墓地管理者による証明、代理申請時の委任状などで、月や季節の条件はない(京都市「改葬許可申請の手続について」2026年7月31日確認)。横浜市も手続きの流れと必要書類だけを示している。
いつやるかは、あなた・親族・寺院・石材店・役所の予定が重なる日をどう作るかという問題だ。動かせる部分と動かせない部分は、はっきり分かれている。
改葬の件数は5年で約1.5倍になっている
厚生労働省の衛生行政報告例には、市区町村が交付した改葬許可の件数が年度ごとに載っている。
| 年度 | 改葬件数(全国) |
|---|---|
| 2020年度 | 117,772件 |
| 2021年度 | 118,975件 |
| 2022年度 | 151,076件 |
| 2023年度 | 166,886件 |
| 2024年度 | 176,105件 |
出典は厚生労働省「衛生行政報告例」第4章 生活衛生 第6表(e-Stat公開のCSV、2026年7月31日確認)。2020年度と比べて約1.5倍だ。改葬件数は原則として遺骨1体ごとに数えるため墓の基数とは一致しないが、増加傾向ははっきり出ている。役所の窓口も僧侶も石材店も5年前より立て込んでおり、思い立って今月中にという組み方は成立しにくい。
「いつ」を3つの層に分けると決まる
日程が決まらないのは、性質の違う3つの「いつ」を1つの問題にしているからだ。分けると主役も所要期間も季節依存も違う。
| 層 | 決めること | 主役 | かかる時間の目安 | 季節の影響 |
|---|---|---|---|---|
| ①話し合い | 遺骨の行き先と費用の負担 | あなたと親族 | 数週間〜数年 | なし(集まれる日次第) |
| ②手続き | 受入証明・埋蔵証明・改葬許可 | 墓地管理者と役所 | 数週間〜2か月程度 | 小さい(窓口の混雑のみ) |
| ③供養と工事 | 閉眼供養と墓石の撤去 | 僧侶と石材店 | 当日〜数週間 | 大きい(天候・繁忙期) |
天候や六曜が効くのは③だけだ。①が終わらないと②に進めず、②で交付される改葬許可証がないと③の遺骨取り出しができない。この一方通行が唯一の制約になる。
法要に合わせるという考え方
法要に合わせる利点はひとつだが、決定的に大きい。親族が同じ日に同じ場所へ集まる機会が、ほかにほとんどない。
合わせやすい法要
- 四十九日(納骨の予定と重なるため、行き先の話がしやすい)
- 一周忌・三回忌(人が集まる規模が比較的大きい)
- 七回忌・十三回忌(参列者が絞られ、話が具体化しやすい)
- 弔い上げの年忌(区切りとして選ばれやすい)
弔い上げを何回忌とするかは宗派と地域で異なるため、菩提寺に確認する範囲になる。
法要の日は工事日ではなく、合意を取る日
法要の当日に墓石の撤去はできない。改葬許可証がなければ遺骨を取り出せず、その許可証は受入先が決まってからしか申請できない。法要の場でできるのは、遺骨の行き先・費用の負担・誰が申請者になるかを決めるところまでだ。組み方は2通りある。
- 法要の場で相談して合意を取り、手続きを進めて、数か月後の別の日に閉眼供養と工事を行う
- 先に手続きを終わらせ、次の年忌法要の日に閉眼供養を重ねる。親族の再集合が1回で済む
2にするなら、法要の日付から逆算して動き出す。目安は後述する。
法要以外に、材料がそろうタイミング
法要のほかにも、判断材料が手元に出てくる瞬間がある。
- 納骨の予定が出たとき:遠方の墓に納めるか、近くへ移すかを一度で決められる
- 墓地管理料の請求が届いたとき:年額と今後の支払いが見え、維持費の話を数字でできる
- 継承者が代わるとき:名義や連絡先を書き換える手続きが発生し、墓地管理者と話す機会になる
- 運転免許の返納や転居を考えたとき:墓参の移動手段が変わり、通える距離が変わる
- 墓地から改修や無縁に関する通知が届いたとき:期限が切られている通知は内容の確認を最優先にする
いずれもこの墓を続けるかを判断する材料が出る瞬間だ。材料がないまま日程だけ決めても、①の合意で止まる。
手続きの時期は自分では動かせない。逆算の起点はここ
工程で最も読み違えやすいのがここだ。改葬には市区町村長の許可が必要で、許可を受けずに遺骨を移すことはできない(福岡市「改葬許可申請の手続きについて」2026年4月10日更新、2026年7月31日確認)。
順序が固定されている
- 改葬先を決める(永代供養墓・納骨堂・樹木葬・別の墓など)
- 改葬先から受入証明書を出してもらう。使用許可証や永代使用承諾書で代えられる自治体もある
- 現在の墓地管理者から埋蔵証明をもらう。横浜市では申請書の所定欄に管理者が証明する形が通常だ(横浜市「改葬(遺骨の移動)の手続き」2026年7月31日確認)
- 現在の墓地がある市区町村へ申請し、改葬許可証の交付を受ける
- 許可証を示して遺骨を取り出し、改葬先の管理者に提出して納める
改葬先が決まらないと2に進めず、2がなければ4の申請ができない。先に墓石を撤去して行き先は後で考えるという順序は成立しない。逆算の起点は法要の日ではなく改葬先の決定日だ。遺骨が複数あるときの扱いも自治体で違い、長野市は受入証明を故人1人につき1通ずつ、焼骨等一覧を添付すれば1通にまとめることも可としている(2026年7月31日確認)。墓の中に何体あるかを先に墓地管理者へ確認する。
手数料と、交付までの日数
手数料は自治体で異なる。横浜市も京都市も改葬許可証は無料としている(いずれも2026年7月31日確認)。ただし埋蔵証明の発行に墓地管理者側の費用がかかる場合があり、これは別に見ておく。
交付までの日数も自治体次第で即日とは限らない。福岡市は申請内容の確認等のため即日交付できない場合があると明記している。郵送申請なら往復の日数も加わるため、工事日を先に押さえてから申請するのは危うい。墓地使用者と申請者が違う場合は承諾書や委任状が要る。親族間で意見が割れているなら、書類を出す前に弁護士や行政書士へ確認する範囲になる。
工事日を押さえる前に、費用の幅だけ確認しておく
撤去費用は墓地の広さ、立地、重機が入るかで変わる。自分の墓の条件でいくらの幅になるかを先に把握すると、親族との話が具体的になる。
無料で墓じまいの費用を比べる季節を天候データで見る
③の工事と屋外の供養だけは天候の影響を受ける。気象庁の梅雨入りと梅雨明けの平年値は次のとおり(1991年から2020年の30年平均、2026年7月31日確認)。
| 地方 | 梅雨入り(平年) | 梅雨明け(平年) |
|---|---|---|
| 九州南部 | 5月30日頃 | 7月15日頃 |
| 九州北部 | 6月4日頃 | 7月19日頃 |
| 近畿 | 6月6日頃 | 7月19日頃 |
| 東海 | 6月6日頃 | 7月19日頃 |
| 関東甲信 | 6月7日頃 | 7月19日頃 |
| 北陸 | 6月11日頃 | 7月23日頃 |
| 東北北部 | 6月15日頃 | 7月28日頃 |
6月上旬から7月下旬は屋外作業が雨で押しやすい。裏を返せば4月から5月、9月から10月は組みやすく、積雪のある地域では冬が候補から外れる。
ただし石材店は雨天でも作業する。効くのは遠方から親族が立ち会うかどうかで、立ち会いを伴うなら日程がずれたときの再調整が重い。当日の進み方は墓じまい当日の流れ|立ち会いから遺骨の受け取りまで、服装は墓じまいの服装|閉眼供養に喪服は必要かにある。
法要の日から逆算するカレンダー
次の年忌法要の日に閉眼供養を重ねたい場合の目安だ。地域や寺院、墓地の状況で前後する。
| 法要日からの逆算 | やること |
|---|---|
| 6か月前 | 遺骨の行き先を検討し始める(永代供養墓・納骨堂・樹木葬・手元供養など) |
| 4〜5か月前 | 親族に相談し、行き先と費用の負担について合意する |
| 3〜4か月前 | 菩提寺と墓地管理者へ相談する。日程の候補を伝える |
| 2〜3か月前 | 石材店に見積りを取る。撤去費用と作業日数を確認する |
| 1〜2か月前 | 受入証明と埋蔵証明をそろえ、改葬許可を申請する |
| 2週間〜1か月前 | 改葬許可証を受け取る。工事日を確定する |
| 当日 | 閉眼供養、遺骨の取り出し |
| 当日〜数週間後 | 墓石の撤去、区画の返還 |
短縮できるのは前半だ。合意が早ければ全体を3か月程度まで詰められる場合もあるが、改葬許可証が出る前に工事日は確定できない。前半に時間がかかること自体は失敗ではない。
避けたほうがよい時期と、避けなくてよい時期
絶対に避けるべき時期はない。避けると調整が楽になる時期がある、という程度だ。
調整が難しくなりやすい時期
- お盆と彼岸:寺院に法要と参拝対応が集中し、閉眼供養の希望日を取りにくい。墓地も混む
- 年末年始:寺院も役所の窓口も動かない日が続き、書類が止まる
- 梅雨と豪雪期:屋外の作業日程がずれやすい
- 年度末:役所の窓口が混みやすく、交付までの日数が読みにくくなる
その時期に置くべきなのは、話し合いのほう
お盆と彼岸は工事に向かないが、親族が墓の前に集まる数少ない機会だ。①の話し合いをここに置き、②と③を秋や春に回す。時期をまるごと避けるのではなく、3つの層のどれを置くかで考える。
六曜は判断材料になるか
自治体が公開している改葬許可の要件に六曜の条件は入っていない。制度上の制約はない。残るのは、親族の中に気にする人がいるなら日取りを合わせておくほうが揉めない、という実務の話だけだ。
先延ばしにしたときに増えるもの
待っている間に増えるものは数えられる。
- 墓地管理料:年額に先延ばしした年数を掛けた分。金額は墓地ごとに違うため、請求書の年額を確認する
- 合意を取る相手:世代が進むと関係者が増え、話がまとまりにくくなる
- 順番待ち:改葬件数は増加傾向で、寺院と石材店の予定は取りにくくなる
継承者がいなくなった墓の扱いは行政側の課題でもあり、総務省行政評価局は2023年9月13日に「墓地行政に関する調査(公営墓地における無縁墳墓を中心として)」の結果を公表している(2026年7月31日確認)。一方で、急ぐ理由がないなら急がなくてよい。行き先が決まらないまま工事日だけ押さえるほうが、あとで戻れない。
日程を決める前に、埋めておく3つの空欄
日程が決まらないときは、たいていこの3つのどれかが空欄だ。
- 遺骨の行き先。永代供養墓か、納骨堂か、樹木葬か、別の墓か、手元供養か。ここが決まらないと受入証明が出ず、改葬許可も申請できない
- 費用の負担者。誰がいくら出すか。撤去費用は墓地の広さ、立地、重機が入るかで変わるため、幅で把握して持ち込む
- 申請者。墓地使用者が誰で、使用者と申請者が違うなら承諾書を誰にもらうか
この3つが埋まれば逆算カレンダーはそのまま使える。全体像は墓じまいとは?費用と流れ、遺骨の行き先の決め方にある。
