遺品整理で先に探すもの|通帳、権利証、保険証券

どこに何をしまってあるか聞けないまま、家を片付ける番が回ってきた。
先に確保するのは9つ。遺言書、通帳と印鑑、権利証、保険証券、年金関係、証券会社の書類、現金と貴金属、金庫と鍵、郵便物です。物が出てこなくても、預貯金・不動産・保険・証券は公的な照会制度で後から特定できます。捜索より先に、開けてはいけない物を覚えてください。
この記事の目次
先に確保する9つと、見つからなかったときの代替ルート
捨てても取り返しがつくもの(衣類、食器、日用品)と、捨てると手続きが止まるもの(証書、印鑑、鍵)を分けて、後者だけを先に一箇所へ集めます。下の表は先に確保したい9分類と、出てこなかったときの代替ルートです(2026年7月31日に各公式ページで確認)。
| 分類 | 具体物 | 出てこないときの代替 |
|---|---|---|
| ①遺言書 | 自筆の書面、公正証書遺言の正本や謄本 | 遺言書保管事実証明書(1通800円)。公正証書は公証役場に照会 |
| ②通帳・カード・印鑑 | 預金通帳、キャッシュカード、銀行印、実印 | ゆうちょ銀行は現存調査(無料)。他行は個別に照会 |
| ③不動産の権利関係 | 権利証、登記識別情報通知、固定資産税の納税通知書 | 所有不動産記録証明書(書面請求1,600円)。相続登記に権利証は原則不要 |
| ④保険 | 生命保険・損害保険の証券、共済の証書 | 生命保険契約照会制度(書面申請7,000円) |
| ⑤証券・投資 | 取引報告書、株券 | 証券保管振替機構に開示請求 |
| ⑥年金・公的書類 | 年金手帳、年金証書、マイナンバーカード | 年金事務所、市区町村の窓口 |
| ⑦現金・貴金属 | タンス預金、商品券、指輪、時計 | 代替なし。物理的に探すしかない |
| ⑧金庫と鍵 | 手提げ金庫、貸金庫のカードや鍵 | 代替なし。解錠業者に相談 |
| ⑨郵便物 | 金融機関の通知、保険の満期案内、督促状 | 代替なし。郵便受けを確認し続ける |
代替が存在しないのは⑦⑧⑨だけなので、体力と人手は現金・貴金属・金庫・郵便物に集中させ、書類は探して無ければ照会に切り替えると決めておきます(遺品整理とは?時期と費用、業者に頼む前の準備)。
なぜ貴重品を「先に」探すのか。期限が3つ動いている
遺品整理と直接ぶつかる期限は3つあります。
1. 相続の承認・放棄は3か月
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の熟慮期間内に、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかを選びます(民法915条1項。裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」2026年7月31日確認)。何もしなければ単純承認とみなされ、借金も引き継ぎます。借用書、督促状、カードの利用明細も貴重品として扱います。財産調査が終わらない場合は、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てる道があります。
2. 遺品に手をつけた時点で選択肢が減ることがある
相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号)。負債の有無が不明なうちに価値のある物を売る、現金を使うといった行為は避けます。
3. 相続登記は3年
2024年(令和6年)4月1日から相続登記が義務化され、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。2026年(令和8年)4月1日からは住所等の変更登記も義務化されます(政府広報オンライン、2026年7月31日確認)。着手時期の考え方は遺品整理はいつから始める?四十九日との関係で扱っています。
探す順番。物より先に「紙束」から入る
紙束から入って、そこで得た手がかりで場所を絞ります。
手順1:郵便物と封筒を全部開ける
金融機関からの通知、保険の満期案内、証券会社の取引報告書、納税通知書は、どこに口座があるかを教える地図です。中身を見ずに紙を捨てると、契約先をたどる手がかりごと消えます。通帳が見つかったら引き落とし履歴を1年分たどると、保険料や証券会社、サブスクの契約先が芋づる式に出てきます。
手順2:定番の保管場所
- 仏壇の引き出し、神棚、位牌の裏
- 手提げ金庫、鍵のかかる引き出し、化粧箱
- 寝室のタンスの引き出し(特に一番下と、引き出しを抜いた奥)
手順4:捜索のルールを3つ決める
- 必ず2人以上で入る。後から金額をめぐって話がこじれないための、最も安い保険です。
- 引き出しは全部出す。中身を床に広げてから戻します。
金庫が開かないときは、鍵とダイヤル番号を手帳の余白や通帳の裏表紙から探し、見つからなければ解錠業者に依頼します。中身が分からないまま金庫ごと処分すると、現金と書類を同時に失います。
遺言書らしき封筒は開けない。開ける場所が決まっている
封のされた遺言書は、その場で開けません。
保管者または発見した相続人は、家庭裁判所に検認を申し立てます。申立てには遺言書1通につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手が必要で、検認期日に裁判官が相続人等の立会いのもとで開封します(裁判所「遺言書の検認」2026年7月31日確認)。自宅で先に開けると争いになりやすく、民法上の過料の対象にもなり得ます。
法務局に預けられていた場合は検認が不要
自筆証書遺言書保管制度を使っていた場合、家庭裁判所の検認は不要です(法務局における遺言書の保管等に関する法律11条)。相続人は次の証明書を請求できます(手数料は法務省の一覧、2026年7月31日確認)。
- 遺言書保管事実証明書:1通800円。自分を相続人等とする遺言書が保管されているかが分かり、無い場合もその旨の証明書が出ます
- 遺言書情報証明書:1通1,400円。内容を確認でき、相続登記や口座解約の手続きに使えます
- 閲覧:モニターで1回1,400円、原本で1回1,700円
800円で無いことを確認できるので、遺産分割の話し合いを始める前に事実証明書を取る順番が安全です。
通帳が見つからない。口座を洗い出す2本の道
ただし全国の銀行を一括検索する制度は無いため、方法は2本に分かれます。
ゆうちょ銀行は無料で全国一括
ゆうちょ銀行には現存調査があり、名義で開設されている口座の有無を調べて後日郵送で回答してもらえます。窓口に貯金等照会書を提出する方式で、調査自体は無料です(判明した口座の残高証明書の発行には所定の手数料。ゆうちょ銀行公式、2026年7月31日確認)。相続人が手続きする場合は、被相続人の死亡が分かる戸籍謄本等、相続人であることが確認できる戸籍謄本等、本人確認書類、印章を持参します。
民間の銀行は心当たりベースで個別に
都市銀行・地方銀行・信用金庫には横断的な照会窓口がありません。通帳、キャッシュカード、粗品、公共料金の引き落とし、近所の支店から当たりをつけ、金融機関ごとに残高証明を請求します。
権利証が出てこない。2026年2月に使える制度が増えた
結論から書くと、権利証が無くても相続登記はできます。
相続登記に権利証は原則不要
売買や贈与と違い、相続を原因とする登記は相続人の単独申請で、権利証(登記済証・登記識別情報)は原則として添付書類になりません。誰が引き継ぐかは戸籍や遺産分割協議書で証明します。
所有不動産記録証明制度で持っていた不動産を一覧化する
2026年(令和8年)2月2日から所有不動産記録証明制度が始まりました。相続人等が請求すると、亡くなった人が所有権の登記名義人として記録されている全国の不動産の一覧が交付されます(法務省、2026年7月31日確認)。
- 請求できる人:登記名義人本人、その相続人その他の一般承継人、代理人
- 請求先:全国どこの法務局・地方法務局でも可。書面(郵送を含む)またはオンライン
- 手数料:検索条件1件につき1通あたり、書面請求1,600円、オンライン請求で郵送交付1,500円、窓口交付1,470円
- 交付までの期間:制度開始当初は約2週間の見込み
この証明書には限界がある
検索は氏名の前方一致に加え、住所の市区町村までが一致するか、住所の末尾5文字が一致するかで行われます。登記簿上の氏名・住所が古いままだと抽出されず、逆に同名異人の不動産が混ざることもあります。証明書が出たら、固定資産税の納税通知書や古い権利証と突き合わせます。
書類の捜索から頼めるか、費用を含めて比べる
貴重品の捜索を作業に含める業者と、含めない業者があります。料金は間取りと物量で大きく変わるため、1社の見積りだけで決めず、複数社の金額と作業範囲を並べて幅を確かめてください。
遺品整理の料金を比べる保険証券が無い。加入の有無だけなら一括で照会できる
証券が見つからないときは、生命保険協会の生命保険契約照会制度で、加盟する生命保険会社に契約の有無を一括で確認できます。利用料は調査対象となる親族等1名につき、WEB申請6,000円、書面申請7,000円です(2026年4月1日改定後。生命保険協会公式、2026年7月31日確認)。同協会はシステムに不備が見つかったとして照会システムを停止しており、書面による申請は引き続き利用可能と案内しています(2026年7月31日時点)。申請前に受付状況を確認してください。
- 分かるのは、照会受付日時点で有効に継続している個人保険契約の有無と、どの会社かまで
- 保険金額、受取人、保障内容は分かりません。判明した会社へ個別に請求手続きをします
- 支払済みの契約、解約済み・失効済みの契約、財形保険、支払開始済みの年金保険などは対象外です
通帳の引き落とし履歴に保険料が出ていないか、給与明細に団体扱いの天引きが無いか、生命保険料控除証明書が残っていないか。この3つを先に見ると、7,000円をかけずに契約先が判明することがあります。
証券口座とデジタル資産。口座の在り処だけを先に押さえる
証券会社の書類が出てこない場合は、証券保管振替機構(ほふり)に登録済加入者情報の開示請求を行います。法定相続人、その代理人、遺言執行者が請求でき、郵送での受付です。相続人による請求の開示費用は1件6,050円(税込)で、2026年10月1日付の費用改定が告知されています。書類に不備が無くても、受付から開示結果の送付まで1か月ほどかかるとされています(証券保管振替機構、2026年7月31日確認)。分かるのはどの証券会社や信託銀行に口座があるかまでで、保有銘柄・株数・残高は判明した証券会社に残高証明を請求します。
スマートフォンとパソコンは急いで解約しない
ネット銀行、ネット証券、電子マネー、暗号資産は紙の通帳が存在せず、端末とメールが唯一の入口です。携帯電話の契約を先に解約すると二段階認証のショートメッセージが受け取れず、口座の特定が難しくなります。
現金や貴金属が出てきたときの扱い
- その場で写真を撮る。発見場所が分かる引きの写真と、金額や品物が分かる寄りの写真を残します
- 相続人全員に、その日のうちに共有する。
- 使わない、売らない、分けない。財産の処分は単純承認とみなされる場合があります(民法921条1号)
- 保管者を1人決めて、一箇所にまとめる。
現金や貴金属がまとまって出てきた場合は、税理士に総額を伝えて判断を仰いでください。骨董品や美術品は、価値が分からないまま処分するのが一番の損失です(遺品の家具の処分|買取が付く物と費用がかかる物)。
自分で探すか、業者に頼むか
次のどれかに当てはまるなら、捜索を含めて業者に相談する判断が現実的になります。
- 実家が遠方で、何度も往復できない
- 賃貸で、明け渡し期限が決まっている
- 物量が多く、床が見えない状態から始める必要がある
- 相続人が高齢で、押入れや天袋の上げ下ろしができない
貸金庫の鍵やカード、契約書の控えが出てきたら、その金融機関に連絡します。
作業範囲と料金を並べて比べる
貴重品の捜索まで含めた見積りを、複数の業者から取って比較できます。金額だけでなく、発見物の報告方法と立ち会いの可否を同じ条件で聞くと、業者ごとの差が見えます。
遺品整理の料金を比べる