仏壇を継ぐ人がいないときの選択肢|寺に預ける形も

仏壇を継ぐ人がいない、という状態そのものは珍しいことではない。
取れる形は5つある。そのまま継ぐ/小さくする/両家をまとめる/位牌だけ寺に預ける/仏壇じまい。寺に預ける形は位牌1本3万円からの実例があり、仏壇本体を手放す場合は閉眼供養と引き取りで合計2万〜15万円が目安になる(2026年7月31日確認)。
この記事の目次
仏壇は遺産分割の対象ではない(民法897条)
最初に位置づけを外すと全部ずれる。仏壇は相続人で分ける財産ではない。民法897条は、系譜・祭具・墳墓を祭祀財産として通常の相続とは別の枠で承継させると定めている。仏壇と位牌は祭具にあたる。
- 亡くなった人が承継者を指定していれば、その人
- 指定がなければ、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者
- 慣習が明らかでないときは、家庭裁判所が定める
(民法897条1項・2項。条文は東京弁護士会「祭祀承継者」のページで確認、2026年7月31日時点)
「長男が継ぐ」と書いた条文はどこにもない。娘でも、嫁いだ人でも、遺産を何も受け取らなかった人でも承継者になれる。祭祀財産は遺産分割の対象外なので、分割協議の取り分と連動しない。
話し合いで決まらなければ、家庭裁判所に祭祀承継者の指定を求める調停・審判を申し立てられる。家事調停の申立手数料は1件1,200円(京都家庭裁判所の家事申立書様式、2026年7月31日確認)。
「継げない」の中身を4つに分けると、打ち手が決まる
1. 住まいの理由(置き場所がない)
仏間のない住宅、和室のないマンション、天井高が足りない。答えは処分ではなく小さくすることで足りる。位牌と本尊を小型の仏壇に移し、旧仏壇だけを手放す。
2. 距離の理由(実家が遠い)
実家の建物をどうするかと連動する。空き家を売る・解体するなら、仏壇の期限は建物の期限と同じになる。
3. 家族構成の理由(次の代がいない)
この場合だけは小さくしても解決にならない。自分の代のあとに同じ問題が再発するので、寺に預ける形(位牌の永代供養)が本命になる。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、単独世帯は2050年に全世帯の44.3%・2,330万世帯、平均世帯人員は2020年の2.21人から2050年に1.92人まで下がる(「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6年推計」、2026年7月31日確認)。
4. 心情・宗派の理由
嫁ぎ先に別の宗派の仏壇がある、義実家の仏壇を引き取ることに抵抗がある、菩提寺との付き合いを続けられない。この理由は費用では解けない。先に家族間で言葉にしておかないと、処分したあとに蒸し返される。
選択肢は5つ。費用と向き不向きを並べる
| 選択肢 | 費用の目安 | 向いている状況 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| そのまま継ぐ | 0円〜(移動費・お布施別) | 置き場所があり、次の代も見通せる | 移動にも閉眼・開眼の法要を求める寺がある |
| 小さくする(買い替え) | 新しい仏壇の代金+旧仏壇の処分費 | 置けないだけで、供養は続けたい | 位牌の寸法が新しい仏壇に入るか要確認 |
| 両家をひとつにまとめる | 閉眼供養+開眼供養のお布施 | 実家と嫁ぎ先の2基を抱えた | 宗派が違う場合は事前に寺へ相談 |
| 寺に預ける(位牌の永代供養) | 位牌1本3万円〜。寺により10万〜50万円 | 次の代がいない・遠方で管理できない | 仏壇本体は受けない寺がある |
| 仏壇じまい(処分) | 合計2万〜15万円が目安 | 空き家を手放す・保管先がない | 親族の同意と中身の確認が先 |
費用は各解説サイトの集計と寺院公式の掲示額を突き合わせた幅で、2026年7月31日時点。寺・地域・大きさで動くので一点で見積もらない。
寺に預ける形の中身。位牌の永代供養・一時預かり・位牌堂
位牌の永代供養
位牌を寺の位牌堂などに安置し、一定期間ののち過去帳や供養塔に名前を移して供養を続けてもらう形。群馬県の宝徳寺は位牌永代供養料を1本3万円(追加1本につき3,000円)とし、3年間安置したのち永代供養過去帳位牌に戒名・俗名・没年月日・行年を記入して供養を続ける。宗旨宗派不問、檀家になる必要はなく管理費・会費・寄付も徴収しない(宝徳寺公式サイト、2026年7月31日確認)。
兵庫県の中山寺の永代供養は50年で500,000円(夫婦900,000円)、100年の特別永代供養で1,000,000円(夫婦1,900,000円)と桁が違う。指定の位牌を新たに作って位牌棚で祀り、期間終了後は金属プレートに氏名を移す(中山寺公式サイト、2026年7月31日確認)。
問い合わせるときは、既存の位牌をそのまま受けてもらえるか、安置期間、期間終了後の扱い、追加費用の有無の4点を数字で聞く。
一時預かり
月単位・年単位で預かる寺があり、目安は年1万〜3万円程度。三回忌や七回忌まで位牌を使いたい、売却時期がまだ読めない、という段階では現実的になる。
仏壇本体は別扱いになることがある
中山寺は公式Q&Aで、位牌の処分は可能だが仏壇は受けられず仏壇店に相談してほしいと明示している(2026年7月31日確認)。位牌の行き先と仏壇本体の行き先は別々に決める前提で動く。
金額の考え方は永代供養の費用相場と、合祀か個別かの選び方に、位牌そのものの扱いは位牌の処分方法と費用|永代供養に預ける選択肢にまとめている。
仏壇じまいを選ぶ場合の順番と費用の内訳
- 親族に先に伝える。事後報告が最ももめる
- 菩提寺に相談する。閉眼供養と引き取りをまとめて受けてくれることがある
- 仏壇の中身を全部出す。引き出し・裏板・下台まで(次章)
- 閉眼供養(魂抜き)を依頼する。お布施の目安は1万〜5万円。御車料として別に5千〜1万円を包む慣行がある地域もある
- 仏壇本体を引き取ってもらう。依頼先で費用が大きく変わる(次章)
- 位牌・本尊の行き先を決める。お焚き上げか、永代供養か、新しい仏壇へ移すか
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 閉眼供養のお布施 | 1万〜5万円 | 3万〜5万円とする解説も多い |
| 御車料 | 5千〜1万円 | 僧侶に出向いてもらう場合 |
| 寺に引き取りまで依頼 | 1万〜10万円 | 供養込みで3万〜7万円とする解説もある |
| 仏壇店に依頼 | 2万〜8万円 | 買い替えなら引き取り無料の店もある |
| 不用品回収業者 | 数千円〜5万円 | 閉眼供養をセットにする業者もある |
| 自治体の粗大ごみ | 数百円〜数千円 | 金額と区分は自治体ごとに異なる |
| 位牌の永代供養 | 1本3万円〜、寺により10万〜50万円 | 期間と期間後の扱いで大きく変動 |
| お焚き上げ | 1万円前後 | 位牌1本あたり |
相場は各解説サイトの集計と寺院公式の掲示額をもとにした幅で、2026年7月31日時点。手順の詳細は仏壇の処分方法と費用|魂抜きから引き取りまでの順番で分解している。
仏壇本体をどこに渡すか。4つの引き取り先を比べる
寺(菩提寺・供養を受け付ける寺)
閉眼供養と引き取りを一度で済ませられる。ただし位牌は受けても本体は受けない寺がある。運搬を自分で行うのかも先に確認する。
仏壇店
買い替えを伴うなら第一候補。搬出に慣れており、傷や床の養生も込みで動く。買い替えなしの引き取りのみだと割高になることがある。創価学会の仏壇は一般の仏具店では扱わないとされ、専門店を探す必要がある。
不用品回収・作業代行
実家の片づけと同時に進めるならこの形。家具・家電・残置物をまとめて出せる。料金は積み込み量と搬出経路で変わるため複数から見積もりを取る。
仏壇の運び出しだけを、料金を見比べてから頼む
出張見積もりを呼ぶ前に、作業内容ごとの料金とレビューを並べて比べられる。仏壇の搬出だけを単発で頼みたいときも、実家の片づけとまとめたいときも、先に相場感をつかんでから連絡できる。
作業の料金を比べる自治体の粗大ごみ
最も安いが条件がある。神戸市はFAQで仏壇を大型ごみと明示し、事前申込制(有料)としている。ただし5kg以内でごみ指定袋に入り口を結べる場合は、木製・プラスチック製なら燃えるごみ、陶器製・金属製なら燃えないごみになる(神戸市FAQ、2025年8月18日更新/2026年7月31日確認)。
- 閉眼供養を済ませてから出す(自治体は供養までは行わない)
- 金具・鏡・陶器など、本体と分別が必要な部材がある
- 収集所に出す形だと近所から見える。持ち込みを選べる自治体もある
中身の確認と、宗派によって変わるところ
処分前に必ず出すもの
長く動かしていない仏壇からは次のようなものが出てくる。
- 現金、通帳、印鑑、権利証
- 分骨した遺骨、へその緒
- 手紙、写真、古い戸籍や過去帳
- 指輪などの貴金属
引き出しと下台だけでなく、本尊の後ろ、天井板の上、裏板の隙間まで見る。実家の仏壇なら複数人で確認する。過去帳には代々の戒名と没年月日が記録され、年忌の時期を確認する実用の資料でもあるので、処分の対象に入れる前に一度考える。
浄土真宗は言葉と儀式が違う
浄土真宗では、位牌や仏壇に魂が宿るという考え方を取らない。魂抜きではなく遷座法要・遷仏法要と呼ばれる儀式を行い、位牌ではなく過去帳や法名軸を用いる寺もある。他宗派向けの解説をそのまま持ち込むと話が通じない。
菩提寺が分からないとき
手がかりは位牌の戒名、過去帳、墓地の管理者、法要の領収書や香典帳、仏壇の中の寺の名入り品。分からなければ供養を受け付ける寺に相談する。
実家の売却・解体を考えているなら、仏壇の期限は建物の期限
継ぐ人がいない仏壇は、たいてい誰も住んでいない実家に残っている。実家をどうするかを決めた瞬間、仏壇の締め切りも決まる。
売却する場合
引き渡し日から逆算して閉眼供養の日程を押さえる。僧侶の予定次第で、お盆・彼岸・年末は取りづらい。
解体する場合
建物の解体費と残置物の撤去費は別建てで見積もられる。仏壇を残したまま取るとその分が上乗せされる。解体業者は供養までは行わないので、先に片づけてから見積もりを取るほうが早い。
しばらく空き家のまま持つ場合
無人の家で仏壇だけが残ると、湿気で本体が傷み、引き取り時に解体扱いになって費用が上がる。判断を先送りにしたまま次の相続が発生すると、承継者を決める話し合いの当事者が一段増える。
位牌の行き先を先に決めると仏壇本体の扱いは自動的に決まりやすい。逆に本体から決めようとすると、位牌の置き場所が浮いて止まる。
問い合わせる前に埋めておく7項目
寺にも業者にも、この7つが埋まっていれば一度の連絡で見積もりまで進む。
- 宗派(位牌の戒名・過去帳・墓の管理者から確認できる)
- 菩提寺の有無(あるなら先に一報を入れる)
- 仏壇の寸法と設置場所(幅・高さ・奥行き、何階か、階段の幅、台付きか上置きか)
- 位牌の本数(永代供養は本数で加算される寺が多い)
- 位牌をどうしたいか(残す/寺に預ける/お焚き上げ)
- 期限(実家の引き渡し日、解体の予定日)
- 誰の同意を取ってあるか
特に3番は効く。仏壇の大きさと搬出経路で引き取り費用は数万円単位で変わる。写真を撮ってメジャーを当てておくだけで見積もりの精度が上がる。
費用を誰が負担するかも先に決める。祭祀財産の承継と費用負担は別の話で、法律で誰が払うと決まってはいない。実務では、承継者が出す、きょうだいで割る、故人の預金から出す、のいずれかが多い。折り合わない場合は相続全体の話として税理士や弁護士に確認する。なお墓じまいと仏壇じまいは連動しない。両方を進める場合は墓、仏壇、位牌の順に閉眼供養を行い、位牌を最後に残す。
実家の片づけとまとめて依頼するなら
仏壇の搬出、家財の片づけ、ハウスクリーニングを同じ画面で比べられる。作業内容ごとに料金とレビューが出るので、電話をかける前に候補を2〜3社に絞り込める。
作業の料金を比べる